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再保険契約に係る収入保険料を巡る訴訟で控訴審が逆転判決

 連結納税の承認を受けた内国法人の海外子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料が「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に該当する否かの判断が争われた事件で東京高裁(中村也寸志裁判長)は、法人側の請求を棄却した原審の東京地裁の判決内容を取り消し、法人側の請求を全面的に認容する逆転判決を言い渡した。

 この事件は、連結納税の承認を受けた法人が法人税及び地方法人税の申告をしたところ、原処分庁が、英領バミューダ諸島に設立した海外子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料は「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料(措令39の117⑧五括弧書き(平成28年政令第159号による改正前のもの))」には該当せず、外国子会社合算税制の適用除外要件のいわゆる非関連者基準を満たさないと判断して申告内容を否認、法人税及び地方法人税に係る更正処分並びにこれらに伴う過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたわけだ。

 そこで法人側が、更正処分及び賦課決定処分について、法人主張額を超える部分の取消しを求めて提訴したものの、原審の東京地裁が法人側の請求を棄却したため、法人側が再度、原処分の取消しを求めて控訴していたという事案である。

 控訴審はまず、政令の括弧書きに示された「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」という文言は、 生命保険等に対する括弧書きの適用をおよそ排除する趣旨であるとは解されないと指摘。

 また、特定外国子会社等の総保険料収入に占める非関連者からの保険料収入が過半か否かを判定する際に、保険契約によって担保される保険危険の過半が非関連者の財産等に係るものか否かという判断基準を明示することによって、その所在する国又は地域で行うことにつき経済合理性が認められない事業活動について外国子会社合算税制の潜脱を防止するという趣旨によるものであると解釈した上で、このような趣旨は、損害保険に限らず広く保険一般に妥当するというべきであるから、括弧書きにいう「資産」や「損害賠償責任」は単なる例示にすぎず、「関連者以外の者が有する資産…を保険の目的とする保険」とは、 非関連者の資産等に対する保険危険を担保する保険をいうものと解するのが相当とも解釈した。

 その結果、元受保険契約は、括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産…を保険の目的とする保険」に当たり、再保険契約に係る収入保険料は、括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に当たると解するのが相当であるから、各連結事業年度において租税特別措置法68条の90第1項に基づき益金の額に算入すべき金額はないことになると判示して、原審の判決内容を取り消す逆転判決を言い渡した。

(2022.09.14東京高裁判決、令和4年(行コ)第36号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)



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 連結納税の承認を受けた内国法人の海外子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料が「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に該当する否かの判断が争われた事件で東京高裁(中村也寸志裁判長)は、法人側の請求を棄却した原審の東京地裁の判決内容を取り消し、法人側の請求を全面的に認容する逆転判決を言い渡した。 この事件は、連結納税の承認を受けた法人が法人税及び地方法人税の申告をしたところ、原処分庁が、英領バミューダ諸島に設立した海外子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料は「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料(措令39の117⑧五括弧書き(平成28年政令第159号による改正前のもの))」には該当せず、外国子会社合算税制の適用除外要件のいわゆる非関連者基準を満たさないと判断して申告内容を否認、法人税及び地方法人税に係る更正処分並びにこれらに伴う過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたわけだ。 そこで法人側が、更正処分及び賦課決定処分について、法人主張額を超える部分の取消しを求めて提訴したものの、原審の東京地裁が法人側の請求を棄却したため、法人側が再度、原処分の取消しを求めて控訴していたという事案である。 控訴審はまず、政令の括弧書きに示された「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」という文言は、 生命保険等に対する括弧書きの適用をおよそ排除する趣旨であるとは解されないと指摘。 また、特定外国子会社等の総保険料収入に占める非関連者からの保険料収入が過半か否かを判定する際に、保険契約によって担保される保険危険の過半が非関連者の財産等に係るものか否かという判断基準を明示することによって、その所在する国又は地域で行うことにつき経済合理性が認められない事業活動について外国子会社合算税制の潜脱を防止するという趣旨によるものであると解釈した上で、このような趣旨は、損害保険に限らず広く保険一般に妥当するというべきであるから、括弧書きにいう「資産」や「損害賠償責任」は単なる例示にすぎず、「関連者以外の者が有する資産…を保険の目的とする保険」とは、 非関連者の資産等に対する保険危険を担保する保険をいうものと解するのが相当とも解釈した。 その結果、元受保険契約は、括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産…を保険の目的とする保険」に当たり、再保険契約に係る収入保険料は、括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に当たると解するのが相当であるから、各連結事業年度において租税特別措置法68条の90第1項に基づき益金の額に算入すべき金額はないことになると判示して、原審の判決内容を取り消す逆転判決を言い渡した。(2022.09.14東京高裁判決、令和4年(行コ)第36号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2023.02.20 16:10:53