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タワマン節税 抜本的規制へ議論スタート 「総則6項」の適用実態も明らかに

 相続税評価額と実勢価格のかい離を利用した「タワマン節税」の規制に向けて、国税庁は1月30日、第1回となる有識者会議を開催して議論をスタートさせた。タワマン節税を巡っては、税負担を著しく軽減させる事例に限って通達で認められた「総則6項」を用いて後出しで否認するという対応がとられてきたが、評価ルールそのものを見直すことで抜本的な規制を図る。
 マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わらない。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向がある。これを利用し、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」だ。
 タワマン節税はあくまで合法な手段ではあるものの、当局はこれを税逃れ目的の行為とみなし、税額の軽減効果が著しい事例にターゲットを絞り、通達に定められた包括的な否認規定である「総則6項」を用いて否認してきた。同項では、通達によって評価することが「著しく不適当」と認定できるケースに限り、「国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定している。評価ルール全体における例外規定とも呼べる内容で、この項目を適用すれば最終的には国税側の言い値が適用されることになる。
 昨年4月に最高裁判決が下された裁判では、2棟のタワーマンションを計14億円ほどで購入した納税者が、タワマン節税によって評価額を引き下げ、購入に当たっての借入金を債務として差し引いて0円申告をしたことから、当局が総則6項で否認。最終的に追徴課税処分を行った当局側が勝訴したものの、あくまで合法の範囲内で行った相続税対策に対して後出しで追徴課税を行うのは横暴との反発の声も出ていたことから、タワマンの評価ルール自体を見直すことが決まった。昨年12月に与党が発表した税制改正大綱では、「現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある」と見直しの必要性に言及し、「時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記していた。
 1月30日に開催された第1回の有識者会議(座長・前川俊一明海大名誉教授)では、過去に総則6項が適用された件数を明示。それによれば、タワマン節税が総則6項で否認されたのは、2012年~23年の10年間で9回だった。
 出席した委員からは、「価格かい離はタワマンだけの問題ではなく、マンション全体の評価ルールを見直すべき」、「住宅購入者がマンションか一戸建てかを選ぶ際のバイアスとならないよう、急激な評価増は避けるべき」などの意見が上がった。会議では全体の方向性として、一部の税逃れの防止のみが目的ではなく、評価額と時価のかい離の是正を目指すことを確認した。
 有識者会議は今後も複数回開催される予定で、その結論を基に相続税の財産評価基本通達が見直される見込みだ。

提供元:エヌピー通信社

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 相続税評価額と実勢価格のかい離を利用した「タワマン節税」の規制に向けて、国税庁は1月30日、第1回となる有識者会議を開催して議論をスタートさせた。タワマン節税を巡っては、税負担を著しく軽減させる事例に限って通達で認められた「総則6項」を用いて後出しで否認するという対応がとられてきたが、評価ルールそのものを見直すことで抜本的な規制を図る。 マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わらない。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向がある。これを利用し、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」だ。 タワマン節税はあくまで合法な手段ではあるものの、当局はこれを税逃れ目的の行為とみなし、税額の軽減効果が著しい事例にターゲットを絞り、通達に定められた包括的な否認規定である「総則6項」を用いて否認してきた。同項では、通達によって評価することが「著しく不適当」と認定できるケースに限り、「国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定している。評価ルール全体における例外規定とも呼べる内容で、この項目を適用すれば最終的には国税側の言い値が適用されることになる。 昨年4月に最高裁判決が下された裁判では、2棟のタワーマンションを計14億円ほどで購入した納税者が、タワマン節税によって評価額を引き下げ、購入に当たっての借入金を債務として差し引いて0円申告をしたことから、当局が総則6項で否認。最終的に追徴課税処分を行った当局側が勝訴したものの、あくまで合法の範囲内で行った相続税対策に対して後出しで追徴課税を行うのは横暴との反発の声も出ていたことから、タワマンの評価ルール自体を見直すことが決まった。昨年12月に与党が発表した税制改正大綱では、「現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある」と見直しの必要性に言及し、「時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記していた。 1月30日に開催された第1回の有識者会議(座長・前川俊一明海大名誉教授)では、過去に総則6項が適用された件数を明示。それによれば、タワマン節税が総則6項で否認されたのは、2012年~23年の10年間で9回だった。 出席した委員からは、「価格かい離はタワマンだけの問題ではなく、マンション全体の評価ルールを見直すべき」、「住宅購入者がマンションか一戸建てかを選ぶ際のバイアスとならないよう、急激な評価増は避けるべき」などの意見が上がった。会議では全体の方向性として、一部の税逃れの防止のみが目的ではなく、評価額と時価のかい離の是正を目指すことを確認した。 有識者会議は今後も複数回開催される予定で、その結論を基に相続税の財産評価基本通達が見直される見込みだ。提供元:エヌピー通信社
2023.02.09 16:24:48