HOME ニュース一覧 被相続人の居住財産の譲渡特例、信託財産に注意

税ニュース

被相続人の居住財産の譲渡特例、信託財産に注意

 信託契約における残余財産として取得した土地等は、相続で取得した空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用対象になるとは限らない――。東京国税局はこのほど、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(3000万円特別控除)が、信託契約における残余財産に適用できるか否かについての事前照会への文書回答事例を公表した。

 照会者は、母親の相続開始により帰属することとなった信託契約にもとづく残余財産を翌年に譲渡。譲渡所得の計算上、租税特別措置法第35条第3項の居住用財産の譲渡所得の特別控除(本件特例)を適用するに当たり、本件物件が本件信託の残余財産として照会者らに帰属したことは、同項に規定する「取得」に該当すると解釈し、その他の要件を満たす限り本件特例が適用できるか照会した。

 これに対し東京国税局は、本件特例は、相続人が、相続により、その意思の如何にかかわらず、被相続人居住用家屋等の適正管理の責任を負うこととなることを踏まえた趣旨の下、適用対象者を相続人に限定し、かつ、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした場合に限り適用すると規定したものであると考えられるとした上で、信託終了による残余財産の取得は法律上の相続又は遺贈には当たらず、受託者(照会者)は信託行為の当事者であること、信託行為の当事者ではない帰属権利者は、その権利を放棄することができることを踏まえると、本件特例の趣旨の下では、帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと判断した。

 信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき残余財産を取得したとする事情も認められないため、残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできないと回答した。

被相続人の居住財産の譲渡特例について

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

チャットボットの4年分確定申告対応の相談がスタート

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2023/img/img_kokuzei_02_s.jpg
 信託契約における残余財産として取得した土地等は、相続で取得した空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用対象になるとは限らない――。東京国税局はこのほど、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(3000万円特別控除)が、信託契約における残余財産に適用できるか否かについての事前照会への文書回答事例を公表した。 照会者は、母親の相続開始により帰属することとなった信託契約にもとづく残余財産を翌年に譲渡。譲渡所得の計算上、租税特別措置法第35条第3項の居住用財産の譲渡所得の特別控除(本件特例)を適用するに当たり、本件物件が本件信託の残余財産として照会者らに帰属したことは、同項に規定する「取得」に該当すると解釈し、その他の要件を満たす限り本件特例が適用できるか照会した。 これに対し東京国税局は、本件特例は、相続人が、相続により、その意思の如何にかかわらず、被相続人居住用家屋等の適正管理の責任を負うこととなることを踏まえた趣旨の下、適用対象者を相続人に限定し、かつ、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした場合に限り適用すると規定したものであると考えられるとした上で、信託終了による残余財産の取得は法律上の相続又は遺贈には当たらず、受託者(照会者)は信託行為の当事者であること、信託行為の当事者ではない帰属権利者は、その権利を放棄することができることを踏まえると、本件特例の趣旨の下では、帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと判断した。 信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき残余財産を取得したとする事情も認められないため、残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできないと回答した。
2023.01.11 16:04:10