外部から伺い得る特段の行動を否定、重加算税の賦課を取消し
年金受給者が確定申告の際に保険契約に基づく一時金及び定期支払金(一時金等)を申告しなかったことを巡って、その行為が重加算税の賦課要件を満たすか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまでは認めることができないと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消した。
この事件は、年金受給者である審査請求人が生命保険契約等に基づく一時金等を一時所得等に含めるなどして所得税等の修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告について隠蔽又は仮装の事実があったと認定して、重加算税の賦課決定処分をしてきたことから、請求人側が過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めて審査請求したという事案である。
原処分庁側は、年金受給者である請求人が生命保険会社から振り込まれた保険契約に基づく一時金及び定期支払金を含めずに所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたことについて、一時金等が課税の対象となることを十分に認識しながら、申告書の作成を補助した請求人の親族に一時金等が振り込まれた預金口座の通帳を提示しなかったことや、一時金等の支払明細等を廃棄したことは、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした場合に当たるから、国税通則法第68条1項が定める重加算税の賦課要件を満たす旨主張して、審査請求の棄却を求めた。
これに対して裁決はまず、請求人は、保険の取扱代理店である銀行の担当者から一時金等についての課税関係の説明を受け、支払明細等の送付を受けていたことから、一時金等の存在や申告の必要性を一旦認識することができたものと認められると指摘。
しかしながら、請求人は過去5年間のうち一度しか所得税等の確定申告をしておらず、その確定申告についても金地金の売却利益について申告が必要である旨記載された税務署からのお知らせが届いたことを動機として行われたものであり、遺族年金を含めて申告するなど、請求人に確定申告の経験や税務の知識が豊富にあったとはいえないこと、またその説明が口頭により行われていた上、説明があったのも確定申告の時点から約1年以上も前で、支払明細等の送付も確定申告の時点から9ヵ月以上前であったこと--などから判断すれば、確定申告の時点において一時金等の存在や申告の必要性を直ちに認識していたとまではいえず、一時金等を申告しないことを意図していたとはいえないと判断した。
一方、請求人が親族に通帳を提示しなかったことについては、請求人が親族に申告書の作成の補助を依頼した際のやり取りが不明であること、支払明細等を破棄したことについても意図的に廃棄したとは認められないことから、これらをもって、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないと判断して、過少申告加算税相当額を超える部分の金額を取り消している。
(2022.04.15国税不服審判所裁決)
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)