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別法人名義の取引に係る収入は審査請求人に帰属しないと判断

 不動産の売買、賃貸借等を営む法人(審査請求人)とは別法人(やはり不動産業等を営む法人)の名義で行われた土地売買取引等に係る収入の帰属の判断が争われた事件で国税不服審判所は、別法人の代表者及び審査請求人の関係者の申述の信用性を検討した上で、事業の経緯、業務の遂行状況、費用の支払状況などから、別法人名義で行われた取引に係る収入が審査請求人に帰属するとは認められないと判断、原処分の全部を取り消した。

 この事件は、不動産の売買、賃貸借、管理、仲介等の取引に関する業務等を目的として設立された法人(審査請求人)とは別法人の名義で行われた土地売買取引等に係る収益が請求人に帰属するなどと判断、原処分庁が法人税の青色申告の承認取消処分、法人税等及び消費税等の更正処分等並びに源泉徴収に係る所得税等の納税告知処分等を行ってきたことから、請求人側が、原処分庁側には事実関係の誤認があるなどと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人側は別法人の全ての発行済株式を取得し、請求人の代表者がその法人の取締役に就任していたという事情にあった。そこで原処分庁側は、請求人とは別法人(やはり不動産業務を行う法人)の名義で行われた土地売買取引等について、その法人の代表者や請求人の関係者などの各申述から、請求人が主体となって土地売買取引に係る業務を遂行し、請求人の代表者が別法人名義の預金通帳を管理し、別法人の代表者は請求人の代表者の指示によって別法人名義の預金口座から現金を引き出し同人に渡していたという事情を踏まえ、請求人が土地売買取引に係る収益を享受していたというべきであると認定、別法人の総勘定元帳に記載された売上高は請求人に帰属する収益である旨主張して、審査請求の棄却を求めた。

 これに対して裁決はまず、法人の代表者や請求人の関係者などの各申述を的確に裏付ける証拠資料がなく、別法人の代表者は後に当初の申述を全面的に否定しており、その申述をそのまま信用することはできないと指摘。その他に、国税不服審判所に提出された証拠資料等を精査しても、請求人が土地等の売買取引に係る業務を主体的に行った事実や請求人が土地売買取引に係る収益を享受した事実は認められないとも指摘した。

 その上で、別法人の事業の経緯、土地売買取引に係る業務の遂行状況、その業務に係る費用の支払状況などを総合的に判断すると、収入が請求人側に帰属する収益であるとは認められない判断、原処分の全部を取り消した。

(2022.01.12国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)



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2022.11.14 16:31:03