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ふるさと納税の返礼品に係る経済的利益は返礼品調達価格と判断

 ふるさと納税をしたことに伴い地方公共団体から送付された返礼品に係る一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は幾らになるのかの判断が争われた事件で、国税不服審判所はふるさと納税に係る経済的利益の額は、地方公共団体が謝礼として供与する経済的利益の額であるから、地方公共団体が謝礼のために支出した金額(返礼品調達価格)を算定の基礎とすることが相当と判断、納税者側の請求を棄却した。

 この事件は、ふるさと納税を行った納税者(審査請求人)がふるさと納税を行った地方公共団体から返礼品を受けていたこと巡って、原処分庁が返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当すると判断、所得税等の更正処分等をしたのが発端になったもの。そこで請求人側が、原処分庁が算定した経済的利益の価額は客観性や合理性を欠くなどと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人は、複数のふるさと納税を行ったことによって各団体からふるさと納税に係る返礼品の送付を受ける一方、返礼品の一部については指定する者へ送付するよう各団体に依頼していたという事案だが、ふるさと納税の返礼品について原処分庁が算定した経済的利益の価額(原処分庁認定額)は適正な金額ではなく、収入すべき時期にも誤りが認められる旨、また、仮に一時所得の金額を計算するとしても、その経済的利益の価額は事業の広告宣伝のための賞金を受けた場合の評価に関する課税実務上の取扱いに基づき原処分庁認定額に60%を乗じた価額とすべきである旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 裁決は、ふるさと納税制度における返礼品の提供がふるさと納税をした個人に対する謝礼であることからすれば、各返礼品に係る経済的利益は地方公共団体が謝礼のために支出した金額(返礼品調達価格)を算定の基礎とすることが相当であり、通常、地方公共団体が返礼品等をその調達時における時価を超えて調達することはないと考えられ、不当に高額又は低額で取引された事情も認められないと指摘。

 その結果、返礼品調達価格は、地方公共団体が返礼品を調達した時における返礼品の客観的交換価値を示すものと評価できるから、各返礼品を取得することで各返礼品につき返礼品調達価格に相当する経済的利益を得たことになるから、各返礼品に係る経済的利益の価額は各返礼品の返礼品調達価格によるのが相当であるとした。

 さらに、原処分庁認定額には一部誤りがあると認められるものの、返礼品調達価格を基に算定されたものであるから、原処分庁認定額が適正でない点に関する請求人の主張は理由がなく、各返礼品はそもそも事業の広告宣伝のための賞品でもないから、賞品の評価に関する課税実務上の取扱いに基づいて各返礼品を評価すべき旨の請求人の主張も採用することはできないと判断して斥けた。ただ、原処分庁認定額に一部誤りがあったことから、結果的に一部取消しという裁決内容になった。

(2022.02.07国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2022.10.07 15:54:22