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固定資産の評価に係る控訴審の解釈を違法と指摘、差戻し

 古くは塩田跡地だった土地が造成され、ゴルフ場の用に供されている一団の宅地に係る固定資産税の登録価格が適正か否かの判断が争われた事件で最高裁(安浪亮介裁判長)は、登録価格が塩田跡地としての取得価額を評定していないことを理由に評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした控訴審の判断には固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があると判示、更に審理を尽くさせるため控訴審に差し戻した。

 この事件は、ゴルフ場の用に供されている一団の土地に係る固定資産税の納税義務者である者が、土地課税台帳に登録された各土地の価格を不服として固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたのが発端。しかし同委員会が審査の申出を棄却する旨の決定をしてきたため、市を相手に、決定のうち納税義務者側が適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 控訴審の広島高裁は、固定資産評価基準の定めにより評定されるべき取得価額は、ゴルフ場用地に造成される前の塩田跡地の基準年度における客観的時価をいうものと解すべきであるという判断を示した上で、不動産鑑定評価によってこれを求めることができないと指摘。その結果、登録価格は評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということはできず、登録価格は評価基準によって決定される価格を上回らないとは言えないと判示して決定の全部を取り消した。そこで、控訴審の判決内容を不服とした自治体側がその取消しを求めて上告したというわけだ。

 最高裁はまず、土地の価格の算定の際に、造成前の状態である塩田跡地としての取得価額を評定していないことをもって、評価基準の定める評価方法に従っていないと解すべき理由は見当たらないと指摘した。というのも、評価基準はゴルフ場用地の評価に際し附近の土地に比準して取得価額を評定する方法として、特定の具体的な方法を挙げているものではないし、造成から長期間が経過するなどの事情によって、ゴルフ場用地の造成前の状態を前提とした取得価額を正確に把握できない場合も想定されるからだ。

 その結果、登録価格が、塩田跡地としての取得価額を評定していないことを理由に、評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした控訴審の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があると判示して、登録価格が評価基準の定める評価方法に従って算定されたものといえるか否か等について更に審理を尽くさせるため、控訴審に差戻しを命じる判決を言い渡した。

(2022.03.03最高裁第一小法廷判決、令和2年(行ヒ)第323号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 古くは塩田跡地だった土地が造成され、ゴルフ場の用に供されている一団の宅地に係る固定資産税の登録価格が適正か否かの判断が争われた事件で最高裁(安浪亮介裁判長)は、登録価格が塩田跡地としての取得価額を評定していないことを理由に評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした控訴審の判断には固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があると判示、更に審理を尽くさせるため控訴審に差し戻した。 この事件は、ゴルフ場の用に供されている一団の土地に係る固定資産税の納税義務者である者が、土地課税台帳に登録された各土地の価格を不服として固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたのが発端。しかし同委員会が審査の申出を棄却する旨の決定をしてきたため、市を相手に、決定のうち納税義務者側が適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求めて提訴したという事案である。 控訴審の広島高裁は、固定資産評価基準の定めにより評定されるべき取得価額は、ゴルフ場用地に造成される前の塩田跡地の基準年度における客観的時価をいうものと解すべきであるという判断を示した上で、不動産鑑定評価によってこれを求めることができないと指摘。その結果、登録価格は評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということはできず、登録価格は評価基準によって決定される価格を上回らないとは言えないと判示して決定の全部を取り消した。そこで、控訴審の判決内容を不服とした自治体側がその取消しを求めて上告したというわけだ。 最高裁はまず、土地の価格の算定の際に、造成前の状態である塩田跡地としての取得価額を評定していないことをもって、評価基準の定める評価方法に従っていないと解すべき理由は見当たらないと指摘した。というのも、評価基準はゴルフ場用地の評価に際し附近の土地に比準して取得価額を評定する方法として、特定の具体的な方法を挙げているものではないし、造成から長期間が経過するなどの事情によって、ゴルフ場用地の造成前の状態を前提とした取得価額を正確に把握できない場合も想定されるからだ。 その結果、登録価格が、塩田跡地としての取得価額を評定していないことを理由に、評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした控訴審の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があると判示して、登録価格が評価基準の定める評価方法に従って算定されたものといえるか否か等について更に審理を尽くさせるため、控訴審に差戻しを命じる判決を言い渡した。(2022.03.03最高裁第一小法廷判決、令和2年(行ヒ)第323号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2022.04.04 16:03:36