知合いの税理士からの脱税の相談に応じたものと認定、棄却
知合いの税理士から法人の所得金額の圧縮方法の相談を受けた税理士がその知合いの税理士に行ったアドバイスが税理士法36条に規定される脱税に関する相談に当たるか否かの判断が争われた事件で大阪地裁(山地修裁判長)は、法人税の賦課を免れる具体的な方法についての相談相手となって肯定的な回答をしたと認定するとともに、不正に国税の賦課・徴収を免れることに関する指示をしたとも認定して、相談を受けた側の税理士からの懲戒処分取消請求を棄却する判決を言い渡した。
この事件は、ある法人の申告を巡って、その法人の関与をしていた知合いの税理士から法人の所得金額を圧縮する方法の相談を受け、法人の代表取締役だった者(既に死亡)が法人に対する貸付金債権のうち4億円超を生前に債権放棄していたにもかかわらず、死後に債権放棄額を3億円に減額する旨の債権放棄通知書を作成して、法人の債務免除益を1億円以上減少させたことがそもそもの発端になった。
結果として、知合いの税理士の相談に応じた行為が税理士法36条、45条1項の規定に該当すると判断され、処分行政庁から税理士業務の禁止処分を受けたわけだ。そこで、相談を受けた税理士側がその行為は税理士法36条が禁止する脱税に関する「相談」には当たらないから、懲戒処分は違法であるなどと主張して、その取消しを求めて提訴した。
つまり、相談を受けた側の税理士の行為が税理士法36条、45条1項に該当するか否か、具体的にはその行為が「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為」 に該当するか否かが争点になった事案である。
判決はまず、税理士が不正に租税の賦課を免れる等の方法についての相談相手となるにとどまらず、そのための具体的な方法の相談相手となって肯定的な回答をしたことは、税理士の使命に反する行為であり、税理士として不適格であると指摘するとともに、そうした行為は税理士法36条が禁止する 「不正に国税・・・の賦課・・・を免れ、・・・相談に応じ」に当たるという解釈を示した。
その上で、事実関係から債務免除額の変更の提案は債務免除額を減額させ、法人の債務免除益を減額させることを装い、法人が法人税の納税義務を免れることを提案したものといえると認定。その結果、原告の税理士は、法人が法人税の賦課を免れる具体的方法についての相談相手となって肯定的な回答をしたといえると判断して、相談を受けた税理士側からの懲戒処分取消請求を棄却した。
(2021.05.27大阪地裁判決、令和元年(行ウ)第174号)
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