HOME ニュース一覧 1年当たり平均額による算定額が役員退職給与適正額と判断、棄却

税ニュース

1年当たり平均額による算定額が役員退職給与適正額と判断、棄却

 退職した元取締役に支給した役員退職給与に不相当に高額な部分の金額があるか否か及び不相当に高額な部分の金額の算定過程が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、1年当たり役員退職給与額の平均額を基に、元取締役の勤続年数を基に1年当たり平均額により算定した額を役員退職給与適正額と認定した上で、その役員退職給与適正額を超える2億円余が不相当に高額な部分の金額になると判示して、法人側の請求を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、肉用牛の飼育、肥育及び販売事業等を行う法人が、取締役を退任した元取締役に支給した退任慰労金及び特別功労金(役員退職給与)の額の全額を、法人税の所得の金額の計算上,損金の額に算入して確定申告したのが発端。この申告に対して原処分庁側が、支給された役員退職給与には不相当に高額な部分の金額(法法34②)が存在し、その金額は損金の額に算入されないと判断して陰刻内容を否認更正処分をしてきたわけだ。

 そこで法人側が、原処分庁が主張する役員退職給与に係る不相当に高額な部分の金額の算定過程は合理性を欠き、かつ役員退職給与に係る不相当に高額な部分の金額の立証がないなどと主張して、原処分の一部取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり、役員退職給与適正額を巡って、原処分庁側が同業類似法人における取締役又は監査役に対する役員退職給与の支給事例における1年当たり役員退職給与額の平均額及び元取締役の勤続年数の数値を用いた1年当たり平均額法による金額を主張する一方で、法人側が1)同業類似法人の抽出の合理性等、2)役員退職給与適正額の算定に用いるべき支給事例の適格性、3)元取締役の勤続年数、4)1年当たり平均額法を用いることの合理性――の各点から算定の合理性が争われた事案でもある。

 判決はまず、役員退職給与適正額の算定においては複数の方法が考えられるものの、そのいずれを選択するかにかかわらず、同業類似法人の役員退職給与の支給事例が適切に抽出及び選択され、かつ役員の勤続年数が適正に認定及び評価されることが前提になると指摘。

 そこで、同業類似法人の抽出の合理性等、役員退職給与適正額の算定に用いるべき支給事例の適格性、元取締役の勤続年数の点から検討を加えると指摘する一方、その中でも、元取締役と退職の事情又は役職を異にする役員に対する支給事例を用いることの適否は支給事例それ自体から、その適否を判断し得るものであり、かつその適否がその後の検討の前提ともなることから、これをまず検討するとも指摘して事実関係を整理した。その上で、適正額算定の合理性を争う法人側の主張に沿って判断を加えることが事案の理解に資するものと考えられると述べ、これに沿って順次検討を加えている。

 その結果、この事案における役員退職給与適正額の算定は、1年当たり役員退職給与額の平均額を基に元取締役の勤続年数を基に1年当たり平均額によって算定した額を役員退職給与適正額と認定。結果的に、1年当たり役員退職給与額の平均額及び役員退職給与適正額を超える2億3000万円余が、不相当に高額な部分の金額となると判示して、法人側の請求を棄却する判決を言い渡した。

(2020.03.23東京地裁判決、平成28年(行ウ)第589号法人税更正処分取消請求事件)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

検査院、倒産防止共済特例に係る申告担保の改善要求

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2021/img/img_hojin_01_s.jpg
 退職した元取締役に支給した役員退職給与に不相当に高額な部分の金額があるか否か及び不相当に高額な部分の金額の算定過程が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、1年当たり役員退職給与額の平均額を基に、元取締役の勤続年数を基に1年当たり平均額により算定した額を役員退職給与適正額と認定した上で、その役員退職給与適正額を超える2億円余が不相当に高額な部分の金額になると判示して、法人側の請求を棄却する判決を言い渡した。 この事件は、肉用牛の飼育、肥育及び販売事業等を行う法人が、取締役を退任した元取締役に支給した退任慰労金及び特別功労金(役員退職給与)の額の全額を、法人税の所得の金額の計算上,損金の額に算入して確定申告したのが発端。この申告に対して原処分庁側が、支給された役員退職給与には不相当に高額な部分の金額(法法34②)が存在し、その金額は損金の額に算入されないと判断して陰刻内容を否認更正処分をしてきたわけだ。 そこで法人側が、原処分庁が主張する役員退職給与に係る不相当に高額な部分の金額の算定過程は合理性を欠き、かつ役員退職給与に係る不相当に高額な部分の金額の立証がないなどと主張して、原処分の一部取消しを求めて提訴したという事案である。 つまり、役員退職給与適正額を巡って、原処分庁側が同業類似法人における取締役又は監査役に対する役員退職給与の支給事例における1年当たり役員退職給与額の平均額及び元取締役の勤続年数の数値を用いた1年当たり平均額法による金額を主張する一方で、法人側が1)同業類似法人の抽出の合理性等、2)役員退職給与適正額の算定に用いるべき支給事例の適格性、3)元取締役の勤続年数、4)1年当たり平均額法を用いることの合理性――の各点から算定の合理性が争われた事案でもある。 判決はまず、役員退職給与適正額の算定においては複数の方法が考えられるものの、そのいずれを選択するかにかかわらず、同業類似法人の役員退職給与の支給事例が適切に抽出及び選択され、かつ役員の勤続年数が適正に認定及び評価されることが前提になると指摘。 そこで、同業類似法人の抽出の合理性等、役員退職給与適正額の算定に用いるべき支給事例の適格性、元取締役の勤続年数の点から検討を加えると指摘する一方、その中でも、元取締役と退職の事情又は役職を異にする役員に対する支給事例を用いることの適否は支給事例それ自体から、その適否を判断し得るものであり、かつその適否がその後の検討の前提ともなることから、これをまず検討するとも指摘して事実関係を整理した。その上で、適正額算定の合理性を争う法人側の主張に沿って判断を加えることが事案の理解に資するものと考えられると述べ、これに沿って順次検討を加えている。 その結果、この事案における役員退職給与適正額の算定は、1年当たり役員退職給与額の平均額を基に元取締役の勤続年数を基に1年当たり平均額によって算定した額を役員退職給与適正額と認定。結果的に、1年当たり役員退職給与額の平均額及び役員退職給与適正額を超える2億3000万円余が、不相当に高額な部分の金額となると判示して、法人側の請求を棄却する判決を言い渡した。(2020.03.23東京地裁判決、平成28年(行ウ)第589号法人税更正処分取消請求事件)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.10.18 16:01:49