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除斥期間経過後の更正に判決の拘束力は及ばないと判断

 未分割遺産に係る相続税の申告後にされた増額更正処分のうち申告税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合に、課税庁が更正の請求に対する処分及び更正をする際にはその判決の拘束力に従って、判決に示された個々の財産の価額等を用いて税額等を計算すべき義務を負うか否かの判断が争われた事件で最高裁(深山卓也裁判長)は、納税者側の請求を認容した控訴審判決を破棄した上で、その義務を負うことはないと判示して消極的な見解を示した。

 この事件は、株式の評価方法を巡って争われた税務訴訟がそもそもの発端になったもので、同判決では納税者側の主張が認容され、その判決結果を受けて国税庁が株式保有特定会社の判定基準を改正したという経緯がある。その判決後、納税者側は遺産分割の調停成立を理由に、同判決で認定された価額と同額による税額等の計算をした上で、更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたわけだ。

 そこで、納税者側がその取消しを求めて提訴したところ、控訴審は、同判決の判断には行政事件訴訟法33条1項の拘束力が生ずると指摘、更正の請求に対する処分等をする際には、同判決に示された株式の価額等を基礎に遺産分割後の課税価格及び納付税額を計算しなければならないと判示して、納税者側の請求を認容する判決を言い渡したことから、控訴審の判断を不服とした課税庁側が、控訴審の判決の取消しを求めて上告していたという事案である。

 最高裁はまず、一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価の誤りを請求の理由とすることはできず、課税庁も更正の除斥期間が経過した後は、その請求に対する処分において評価の誤りを是正することはできないという解釈を示した上で、未分割の場合の更正においても、一旦確定していた相続税額の算定基礎となった価額を用いることになると解するのが相当であるという見解を示した。

 また、処分取消しの判決に伴う拘束力によっても、行政庁が法令上の根拠を欠く行動を義務付けられるものではなく、その義務の内容もそれを行う法令上の権限があるものに限られるという解釈を示した。

 その結果、判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく、課税庁は国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号に基づく更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号に拠る更正をする際には、その判決の拘束力によってその判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないと判示して、国側勝訴の逆転判決を言い渡した。

(2021.06.24最高裁第一小法廷判決、令和2年(行ヒ)第103号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 未分割遺産に係る相続税の申告後にされた増額更正処分のうち申告税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合に、課税庁が更正の請求に対する処分及び更正をする際にはその判決の拘束力に従って、判決に示された個々の財産の価額等を用いて税額等を計算すべき義務を負うか否かの判断が争われた事件で最高裁(深山卓也裁判長)は、納税者側の請求を認容した控訴審判決を破棄した上で、その義務を負うことはないと判示して消極的な見解を示した。 この事件は、株式の評価方法を巡って争われた税務訴訟がそもそもの発端になったもので、同判決では納税者側の主張が認容され、その判決結果を受けて国税庁が株式保有特定会社の判定基準を改正したという経緯がある。その判決後、納税者側は遺産分割の調停成立を理由に、同判決で認定された価額と同額による税額等の計算をした上で、更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたわけだ。 そこで、納税者側がその取消しを求めて提訴したところ、控訴審は、同判決の判断には行政事件訴訟法33条1項の拘束力が生ずると指摘、更正の請求に対する処分等をする際には、同判決に示された株式の価額等を基礎に遺産分割後の課税価格及び納付税額を計算しなければならないと判示して、納税者側の請求を認容する判決を言い渡したことから、控訴審の判断を不服とした課税庁側が、控訴審の判決の取消しを求めて上告していたという事案である。 最高裁はまず、一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価の誤りを請求の理由とすることはできず、課税庁も更正の除斥期間が経過した後は、その請求に対する処分において評価の誤りを是正することはできないという解釈を示した上で、未分割の場合の更正においても、一旦確定していた相続税額の算定基礎となった価額を用いることになると解するのが相当であるという見解を示した。 また、処分取消しの判決に伴う拘束力によっても、行政庁が法令上の根拠を欠く行動を義務付けられるものではなく、その義務の内容もそれを行う法令上の権限があるものに限られるという解釈を示した。 その結果、判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく、課税庁は国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号に基づく更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号に拠る更正をする際には、その判決の拘束力によってその判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないと判示して、国側勝訴の逆転判決を言い渡した。(2021.06.24最高裁第一小法廷判決、令和2年(行ヒ)第103号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.07.26 16:02:42