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価額弁償金は相基11の2-10(2)によるべきと判断

 価額弁償金の金額は申告によって申告された受領金額そのものによるべきか、又はその金額に対象財産の相続開始日における価額が和解条項における価額に占める割合を乗じて計算した金額によるべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金の金額については、相続税法基本通達11の2-10(代償財産の価額)(1)の取扱いではなく、同通達(2)が定める方法により計算すべきであると判断、原処分を取り消した。

 この事件は、相続人(審査請求人)が相続税の申告の際に、不動産の評価誤りがあったこと及び遺留分減殺請求に基づく価額弁償金につき取得財産の価額に算入した金額に相続税法基本通達11の2-10(代償財産の価額)(2)の適用漏れがあったことを理由に更正の請求をしたところ、原処分庁が不動産の評価誤りのみを認める更正処分をしてきたことから、相続人側が更正処分の取消しを求めて審査請求したという事案である。

 相続税法基本通達11の2-10は、代償財産の価額は代償分割の対象財産を現物で取得した者が他の共同相続人等に対する代償債務の額の相続開始時における金額によるものとする旨定め、そのただし書きにおいて共同相続人等全員の協議に基づいて代償財産の額を一定の算式に準じて又は合理的と認められる方法によって計算して申告があった場合、及びそれ以外の場合で代償債務の額が代償分割の対象財産が特定され、かつその財産の代償分割時における通常の取引価額を基として決定されている時に分けて、代償財産の価額を定めている。

 そこで原処分庁側は、遺留分減殺請求訴訟の和解の際に、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する価額弁償金の金額について何らかの合意があったと考えるのが自然であるとして、相続税の取得財産の価額に算入する価額弁償金の金額は、相続税法基本通達11の2-10(1)の要件を満たしており、通達(2)によるべきとする更正の請求は認められない旨主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 裁決はまず、訴訟中から申告までの間に直接やり取りをしていた訴訟代理人間において、価額弁償金をいくらとして申告するかについて協議がされていないことについては関係者の答述が一致しており、訴訟中から申告に至るまでの経緯等に照らしても、価額弁償金については、その申告額を具体的に協議した事実は認められず、他に申告額についての具体的な協議の事実が認められるような事情もないことからすれば、その協議はなかったと認められるから、通達(1)の場合には該当しないと指摘した。
 その上で、価額弁償金の金額は対象財産が特定され、かつ和解時に合意された対象財産の通常の取引価額を基として決定されたものであるから、通達(2)の場合に該当すると指摘。その結果、相続税の取得財産の価額に算入する金額は通達(2)に定める方法によって計算すべきであると判断、原処分庁側の主張はいずれも理由がないとして斥けた。

(2020.08.11 国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 価額弁償金の金額は申告によって申告された受領金額そのものによるべきか、又はその金額に対象財産の相続開始日における価額が和解条項における価額に占める割合を乗じて計算した金額によるべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金の金額については、相続税法基本通達11の2-10(代償財産の価額)(1)の取扱いではなく、同通達(2)が定める方法により計算すべきであると判断、原処分を取り消した。 この事件は、相続人(審査請求人)が相続税の申告の際に、不動産の評価誤りがあったこと及び遺留分減殺請求に基づく価額弁償金につき取得財産の価額に算入した金額に相続税法基本通達11の2-10(代償財産の価額)(2)の適用漏れがあったことを理由に更正の請求をしたところ、原処分庁が不動産の評価誤りのみを認める更正処分をしてきたことから、相続人側が更正処分の取消しを求めて審査請求したという事案である。 相続税法基本通達11の2-10は、代償財産の価額は代償分割の対象財産を現物で取得した者が他の共同相続人等に対する代償債務の額の相続開始時における金額によるものとする旨定め、そのただし書きにおいて共同相続人等全員の協議に基づいて代償財産の額を一定の算式に準じて又は合理的と認められる方法によって計算して申告があった場合、及びそれ以外の場合で代償債務の額が代償分割の対象財産が特定され、かつその財産の代償分割時における通常の取引価額を基として決定されている時に分けて、代償財産の価額を定めている。 そこで原処分庁側は、遺留分減殺請求訴訟の和解の際に、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する価額弁償金の金額について何らかの合意があったと考えるのが自然であるとして、相続税の取得財産の価額に算入する価額弁償金の金額は、相続税法基本通達11の2-10(1)の要件を満たしており、通達(2)によるべきとする更正の請求は認められない旨主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。 裁決はまず、訴訟中から申告までの間に直接やり取りをしていた訴訟代理人間において、価額弁償金をいくらとして申告するかについて協議がされていないことについては関係者の答述が一致しており、訴訟中から申告に至るまでの経緯等に照らしても、価額弁償金については、その申告額を具体的に協議した事実は認められず、他に申告額についての具体的な協議の事実が認められるような事情もないことからすれば、その協議はなかったと認められるから、通達(1)の場合には該当しないと指摘した。 その上で、価額弁償金の金額は対象財産が特定され、かつ和解時に合意された対象財産の通常の取引価額を基として決定されたものであるから、通達(2)の場合に該当すると指摘。その結果、相続税の取得財産の価額に算入する金額は通達(2)に定める方法によって計算すべきであると判断、原処分庁側の主張はいずれも理由がないとして斥けた。(2020.08.11 国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.05.24 15:47:41