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診療協力に伴う協力金は給与等に充てるための支払いと認定

 診療所の勤務医を診療協力として別の病院の診療に従事させたことに伴い支給を受けた協力金が、「雇用者等給与支給額が増加した場合の所得税額の特別控除(措法10の5の3三)」ただし書きの「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、勤務医に診療協力の回数に応じて賞与を支給していたことは勤務医が診療協力に従事し、協力金の支払いを受けたために他ならないことから、「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当すると判断、原処分の一部を取り消した。

 この事件は、青色申告の承認を得て医業を営む者(審査請求人)が、雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除を適用して所得税等の確定申告をしたことが発端。この申告に対して原処分庁が特別控除の適用は認められないとして更正処分等をしてきたため、医業を営む者がその全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、請求人が経営する診療所に勤務する医師(勤務医)を診療協力として別病院の外来患者の診療に従事させたことに伴い別病院から支払いを受ける協力金は、1)別病院が委託費として経理処理していること、2)別病院の経理担当者が「勤務医の給与に充てるために支払ったものではない」旨証言していることを理由に、同特別控除に規定される「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当しないから、特別控除の適用を受けることができない旨主張して、審査請求の棄却を求めた。

 裁決は、請求人と勤務医との雇用契約に賞与を支給する定めがないにもかかわらず、請求人が勤務医に対して診療協力の回数に応じて賞与を支給していたことは、その勤務医が診療協力に従事し、協力金の支払いを受けたために他ならないことから、協力金は勤務医に対する賞与に充てるために、別病院から支払いを受けたものと認定。

 したがって、協力金は、租税特別措置法10条の5の3第2項3号括弧書きに規定される「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当するという判断を示した。結局、更正処分の一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の額を計算すると5000円未満となる結果、国税通則法119条(国税の確定金額の端数計算等)4項の規定に基づき、その全額を切り捨てることとなるため、賦課決定処分の全部を取り消した。

(2020.07.07国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 診療所の勤務医を診療協力として別の病院の診療に従事させたことに伴い支給を受けた協力金が、「雇用者等給与支給額が増加した場合の所得税額の特別控除(措法10の5の3三)」ただし書きの「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、勤務医に診療協力の回数に応じて賞与を支給していたことは勤務医が診療協力に従事し、協力金の支払いを受けたために他ならないことから、「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当すると判断、原処分の一部を取り消した。 この事件は、青色申告の承認を得て医業を営む者(審査請求人)が、雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除を適用して所得税等の確定申告をしたことが発端。この申告に対して原処分庁が特別控除の適用は認められないとして更正処分等をしてきたため、医業を営む者がその全部取消しを求めて審査請求したという事案である。 原処分庁側は、請求人が経営する診療所に勤務する医師(勤務医)を診療協力として別病院の外来患者の診療に従事させたことに伴い別病院から支払いを受ける協力金は、1)別病院が委託費として経理処理していること、2)別病院の経理担当者が「勤務医の給与に充てるために支払ったものではない」旨証言していることを理由に、同特別控除に規定される「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当しないから、特別控除の適用を受けることができない旨主張して、審査請求の棄却を求めた。 裁決は、請求人と勤務医との雇用契約に賞与を支給する定めがないにもかかわらず、請求人が勤務医に対して診療協力の回数に応じて賞与を支給していたことは、その勤務医が診療協力に従事し、協力金の支払いを受けたために他ならないことから、協力金は勤務医に対する賞与に充てるために、別病院から支払いを受けたものと認定。 したがって、協力金は、租税特別措置法10条の5の3第2項3号括弧書きに規定される「その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」に該当するという判断を示した。結局、更正処分の一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の額を計算すると5000円未満となる結果、国税通則法119条(国税の確定金額の端数計算等)4項の規定に基づき、その全額を切り捨てることとなるため、賦課決定処分の全部を取り消した。(2020.07.07国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.05.10 16:19:03