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預金の引出しは相続財産の処分には該当しないと判断

 相続放棄の無効を前提に行われた不動産の差押処分を巡って、相続人の口座に振り込まれた被相続人の顧問料相当額を引き出したことが法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、顧問料相当額を引き出した事実は相続財産の処分には該当しないとして相続放棄の申述が有効であると判断、不動産の差押処分を取り消した。

 この事件は、原処分庁が、滞納法人の納税保証人が死亡したことから、相続人である配偶者(審査請求人)が納税保証人の納付義務を承継したものと認定して、配偶者名義の不動産を差し押さえたのが発端。そこで請求人側が、相続放棄をしたため納付義務は承継していないと主張して、差押処分の全部取消しを求めて審査請求した事案である。

 つまり、民法921条が定める法定単純承認事由に該当するものとして滞納国税の納付義務を承継するか否か、また被相続人の顧問料相当額を引き出した事実が法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当するか否かが争点になったわけだ。

 原処分庁側は、1)請求人名義の金融機関の口座に振り込まれた金員は、被相続人に対する未払報酬が振り込まれたもので相続財産に該当し、その金員を受領、出金及び返納した行為は民法921条1号が相続財産の処分に該当し、2)請求人名義の各不動産の取得資金は相続人が出捐し、又は被相続人の意思により関係会社等が支出しているから、被相続人に帰属する相続財産に該当すると指摘。その上で、請求人による不動産に係る隠匿及び処分に該当する行為は法定単純承認事由に該当するため、相続放棄は認められず、被相続人の納付義務を承継する旨主張した。

 裁決はまず、金員が相続財産に該当することが認められるものの、金員が委任契約に基づいて口座に振り込まれたものにすぎず、請求人が出金した金員を一部でも費消した事実は認められず、請求人による振込名義人あての送金は相続放棄の申述が受理された後であることから、続財産の処分には該当しないと判断。

 また、不動産が被相続人に帰属する財産であることを認めるに足りる証拠がなく、相続財産に該当するとは認められないことからも、請求人には法定単純承認事由に該当する事実がなく相続放棄の申述は有効であるから被相続人の納付義務を承継しないとも判断して、原処分の全部を取り消した。

(2020.04.17国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 相続放棄の無効を前提に行われた不動産の差押処分を巡って、相続人の口座に振り込まれた被相続人の顧問料相当額を引き出したことが法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、顧問料相当額を引き出した事実は相続財産の処分には該当しないとして相続放棄の申述が有効であると判断、不動産の差押処分を取り消した。 この事件は、原処分庁が、滞納法人の納税保証人が死亡したことから、相続人である配偶者(審査請求人)が納税保証人の納付義務を承継したものと認定して、配偶者名義の不動産を差し押さえたのが発端。そこで請求人側が、相続放棄をしたため納付義務は承継していないと主張して、差押処分の全部取消しを求めて審査請求した事案である。 つまり、民法921条が定める法定単純承認事由に該当するものとして滞納国税の納付義務を承継するか否か、また被相続人の顧問料相当額を引き出した事実が法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当するか否かが争点になったわけだ。 原処分庁側は、1)請求人名義の金融機関の口座に振り込まれた金員は、被相続人に対する未払報酬が振り込まれたもので相続財産に該当し、その金員を受領、出金及び返納した行為は民法921条1号が相続財産の処分に該当し、2)請求人名義の各不動産の取得資金は相続人が出捐し、又は被相続人の意思により関係会社等が支出しているから、被相続人に帰属する相続財産に該当すると指摘。その上で、請求人による不動産に係る隠匿及び処分に該当する行為は法定単純承認事由に該当するため、相続放棄は認められず、被相続人の納付義務を承継する旨主張した。 裁決はまず、金員が相続財産に該当することが認められるものの、金員が委任契約に基づいて口座に振り込まれたものにすぎず、請求人が出金した金員を一部でも費消した事実は認められず、請求人による振込名義人あての送金は相続放棄の申述が受理された後であることから、続財産の処分には該当しないと判断。 また、不動産が被相続人に帰属する財産であることを認めるに足りる証拠がなく、相続財産に該当するとは認められないことからも、請求人には法定単純承認事由に該当する事実がなく相続放棄の申述は有効であるから被相続人の納付義務を承継しないとも判断して、原処分の全部を取り消した。 (2020.04.17国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.02.15 16:30:46