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将来の転売目的のマンション購入は課税仕入れと判断、認容

 不動産の売買及び仲介業務等を目的とする法人による将来の転売を目的としたマンションの購入が、課税仕入れの用途区分つまり課税対応課税仕入れと共通対応課税仕入れのいずれに区分されるべきかの判断が争われた事件で東京地裁(清水知恵子裁判長)は、課税仕入れは専ら将来における不動産の転売のためにされたものとして課税対応課税仕入れに区分すべきものであることから、消費税額の全額が控除対象仕入税額になると判断、更正処分のうち申告額を超える部分及び賦課決定処分はいずれも違法であるとして、法人側の請求を認容する判決を言い渡した。

 この事件は、将来の転売を目的とするマンション84棟を購入した不動産の売買及び仲介業務等を目的とする法人が、消費税及び地方消費税の確定申告の際に、各課税仕入れが「課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税対応課税仕入れ)」に区分されると判断、課税仕入れに係る消費税額の全額を控除して申告したのが発端となった。

 これに対して原処分庁が、各課税仕入れは「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通対応課税仕入れ)」に区分すべきものであるから、各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することが認められないと判断、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、法人が更正処分のうち申告額を超える部分及び賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 原処分庁側は、建物の販売(課税資産の譲渡等)のみならず、住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)も目的としたものであるから共通対応課税仕入れに区分すべきであり、控除できるのは課税仕入れに係る消費税額に課税期間の課税売上割合を乗じた金額にとどまると主張して、棄却を求めたわけだ。

 これに対して判決はまず、課税仕入れの用途区分に係る判断は税負担の累積排除という消費税法の目的に照らし、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点から、その課税仕入れが如何なる取引のために行われたものであるのかを経済実態に即して適切に行うべきであると指摘した。

 その上で、中古の賃貸用マンション等の収益不動産を購入し、適正な賃料で貸し付けて空室を可能な限り減らすというリーシングを行った上で収益不動産を顧客に転売するというものであるという認定の下、そのビジネスモデル下における収益不動産の購入が、将来における収益不動産の売却(課税資産の譲渡等)のために行われるのは明らかと認定。

 その結果、収益不動産の仕入日に賃料収入が見込まれることをもって、課税仕入れにつき「その他の資産の譲渡等」にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分するのは事業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らしても、相当性を欠くものと言わざるを得ないと判示して、法人側の請求を認容する判決を言い渡した。

(2020.09.03東京地裁判決 平成30年(行ウ)第559号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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