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経団連が税制改正へ提言 研究開発税制の上限30%に

 経団連は9月9日、2021年度の税制改正に向けた提言を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大で収益が落ち込んでいる企業をフォローするため、研究開発費の一定額を法人税から差し引く「研究開発税制」について、控除の上限を法人税額の30%に引き上げるよう要求。コロナ禍の収束後を見据え、デジタル技術で社会経済を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)やサイバーセキュリティーに関連した投資減税も盛り込んだ。
 研究開発税制は、企業の試験研究費の総額の一定割合を法人税額から控除できる仕組み。控除の上限は現在25%だが、経団連は30%への拡大を求めた。過去にはリーマン・ショックの直後に期間を限定して30%に引き上げられたことがあるが、企業の収益悪化が長期化し、法人税額の減少が現実味を帯びる中で、今回も臨時の対応として必要と判断した。
 DXを巡っては、関連するソフトウエアや機器などへの投資のほか、在宅勤務や遠隔サービスを促進するための設備投資にも減税措置を講じるよう要請。文書への押印を必要とする業務をゼロベースで見直し、税務手続きのデジタル化・簡素化を図ることも促した。また生じた赤字を翌年度以降の黒字と相殺できる欠損金の繰り越し控除について、上限の撤廃か大幅な緩和だけでなく、機関を10年超とすることも選択肢とするよう求めた。
 提言は新型コロナで大企業の体力が弱まっているため、税制面で手厚く保護する必要性を強く説いた形になった。しかし、ある経団連幹部は「大企業が潤えば経済活動が活性化し、国民全体の利益につながるというトリクルダウン理論は、アベノミクスの成果を見れば間違いだったことが明らか。安易な提言は、経団連の思考能力低下が著しい表れだ」と冷ややかに語った。

提供元:エヌピー通信社

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 経団連は9月9日、2021年度の税制改正に向けた提言を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大で収益が落ち込んでいる企業をフォローするため、研究開発費の一定額を法人税から差し引く「研究開発税制」について、控除の上限を法人税額の30%に引き上げるよう要求。コロナ禍の収束後を見据え、デジタル技術で社会経済を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)やサイバーセキュリティーに関連した投資減税も盛り込んだ。 研究開発税制は、企業の試験研究費の総額の一定割合を法人税額から控除できる仕組み。控除の上限は現在25%だが、経団連は30%への拡大を求めた。過去にはリーマン・ショックの直後に期間を限定して30%に引き上げられたことがあるが、企業の収益悪化が長期化し、法人税額の減少が現実味を帯びる中で、今回も臨時の対応として必要と判断した。 DXを巡っては、関連するソフトウエアや機器などへの投資のほか、在宅勤務や遠隔サービスを促進するための設備投資にも減税措置を講じるよう要請。文書への押印を必要とする業務をゼロベースで見直し、税務手続きのデジタル化・簡素化を図ることも促した。また生じた赤字を翌年度以降の黒字と相殺できる欠損金の繰り越し控除について、上限の撤廃か大幅な緩和だけでなく、機関を10年超とすることも選択肢とするよう求めた。 提言は新型コロナで大企業の体力が弱まっているため、税制面で手厚く保護する必要性を強く説いた形になった。しかし、ある経団連幹部は「大企業が潤えば経済活動が活性化し、国民全体の利益につながるというトリクルダウン理論は、アベノミクスの成果を見れば間違いだったことが明らか。安易な提言は、経団連の思考能力低下が著しい表れだ」と冷ややかに語った。提供元:エヌピー通信社
2020.09.10 16:22:31