財務省 予算の説明書を見直し コロナ増税へ地ならしか
財務省は7月2日、国の歳入・歳出状況などを示す「予算フレーム」と呼ばれる文書の表記を見直すと発表した。「財政の現状を分かりやすく示すため」(同省)としており、一見、単なる事務的な変更にしか見えないが、一部で「増税への地ならしか」との憶測を呼んでいる。
「予算フレーム」は、毎年度の当初予算や補正予算ごとに作成される1枚紙の資料。歳出と歳入の大まかな内訳を記載し、いわば予算の大枠に関する「説明書」だ。
令和2年度当初予算の場合、現在は「歳入」欄に税収、その他収入、公債金、および公債金の内訳として建設公債と赤字公債が記載されている。「歳出」欄には、国債費、一般歳出、地方交付税交付金、および一般歳出の内訳として社会保障関係費とそれ以外の記載がある。
令和3年度当初予算からこれを改め、新規国債発行額を示す「公債金」の内訳として、①債務償還費相当分、②利払費相当分、③政策的赤字分(基礎的財政収支赤字)――を追記する。これまでフレームに記載のなかった普通国債残高や、普通国債残高のGDP比なども記す。
この改訂によって、新たに発行する国債のうち、借金の元本返済(債務償還)や利息の支払い(利払費)にどれだけ充てられているかや、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化させる政府目標の達成状況が明示されることになる。どの数字も財務省ホームページに掲載されているが、フレームにも明記することで露出が増える。
ある財務省OBは、今回の見直しが法令の改変も不要で、本来は公表する必要もないものだと指摘した上で、「わざわざ公表したのは、新型コロナウイルス対策で緩みきった財政規律を引き締め、将来の歳出カットと増税に向けた一里塚にする狙いだろう」と解説する。
折しもこの方針が公表されたのは、同日開かれた財務相の諮問機関「財政制度等審議会」の分科会の場。会議後に記者会見した榊原定征会長(前経団連会長)は、膨らんだ国債の処理を巡る増税の必要性を記者から問われ、「今は議論するべき時ではないが、(いつかは)必ずしなければいけない」と述べたという。これに合わせてフレーム見直しを公表したことも「財政再建に向けた財務省のしたたかな戦略」(エコノミスト)との見方を招いている。
提供元:エヌピー通信社