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無償返還すべき特別な事情がないことを理由に借地権を認定

 同族会社が所有する建物の敷地が医療法人に賃貸され、評価の際に相当地代通達を適用すべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、医療法人からの転貸ではなく、直接、被相続人らから賃借しているものと認定、また、将来、同族会社が借地権を無償で返還するというような特別な事情も存しないことを理由に借地権の存在を認定。その結果、審査請求人の1人の請求には理由がないとして斥けたものの、他の2人の請求人からの請求には理由があると判断、全部取消し、一部取消しの裁決を言い渡した。

 この事件は、相続人である3人の審査請求人が、亡父の相続により取得した宅地の価額について、法人に賃貸している土地は借地権の価額を控除した後の価額によることが相当であるという判断の下に相続税の申告をしたのが発端となった。

 これに対して原処分庁が、土地の一部について「土地の無償返還届出書」が提出されているのであるから、届出書の提出があった場合の貸宅地の評価の定めにより評価した金額によることが相当と判断、更正処分等をしてきた。そこで請求人らが、無償返還届出書の記載内容に誤りがあるから無効であるなどと主張して、更正処分等の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、被相続人らは同族会社が所有する登記された建物の敷地を含む全ての土地を医療法人に賃貸しているから、その敷地は医療法人から同族会社側に更に賃貸(転貸)され、また、被相続人ら及び医療法人は土地の無償返還に関する届出書を原処分庁へ提出しているのであるから、敷地の評価は自用地としての価額の80%で評価するべきであると主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 裁決はまず、相当地代通達の適用は、無償返還届出書の提出を前提とするものであることからすれば、1)被相続人らと医療法人との貸借関係が評価対象地のどの範囲に及ぶのかを検討した上で、2)貸借関係に基づき各土地を対象に提出された届出書が有効か否かを検討することで、評価対象地の評価方法が決せられると指摘した。

 その指摘を踏まえ、同族会社側は権利金の支払いはしていないものの、その敷地上に建物を建築後、直接、被相続人らから無償又は有償で敷地を借りていたと認定。また、同族会社側が被相続人らに対し、将来、その敷地に係る借地権を無償で返還するというような特別の事情も存しないことからすれば、その敷地については、同族会社の借地権が存在すると認めるのが相当であるという判断を示した。審査請求の内容に応じて、全部取消し、一部取消し、さらに棄却という裁決結果になった。

(2019.08.19国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 同族会社が所有する建物の敷地が医療法人に賃貸され、評価の際に相当地代通達を適用すべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、医療法人からの転貸ではなく、直接、被相続人らから賃借しているものと認定、また、将来、同族会社が借地権を無償で返還するというような特別な事情も存しないことを理由に借地権の存在を認定。その結果、審査請求人の1人の請求には理由がないとして斥けたものの、他の2人の請求人からの請求には理由があると判断、全部取消し、一部取消しの裁決を言い渡した。 この事件は、相続人である3人の審査請求人が、亡父の相続により取得した宅地の価額について、法人に賃貸している土地は借地権の価額を控除した後の価額によることが相当であるという判断の下に相続税の申告をしたのが発端となった。 これに対して原処分庁が、土地の一部について「土地の無償返還届出書」が提出されているのであるから、届出書の提出があった場合の貸宅地の評価の定めにより評価した金額によることが相当と判断、更正処分等をしてきた。そこで請求人らが、無償返還届出書の記載内容に誤りがあるから無効であるなどと主張して、更正処分等の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。 原処分庁側は、被相続人らは同族会社が所有する登記された建物の敷地を含む全ての土地を医療法人に賃貸しているから、その敷地は医療法人から同族会社側に更に賃貸(転貸)され、また、被相続人ら及び医療法人は土地の無償返還に関する届出書を原処分庁へ提出しているのであるから、敷地の評価は自用地としての価額の80%で評価するべきであると主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。 裁決はまず、相当地代通達の適用は、無償返還届出書の提出を前提とするものであることからすれば、1)被相続人らと医療法人との貸借関係が評価対象地のどの範囲に及ぶのかを検討した上で、2)貸借関係に基づき各土地を対象に提出された届出書が有効か否かを検討することで、評価対象地の評価方法が決せられると指摘した。 その指摘を踏まえ、同族会社側は権利金の支払いはしていないものの、その敷地上に建物を建築後、直接、被相続人らから無償又は有償で敷地を借りていたと認定。また、同族会社側が被相続人らに対し、将来、その敷地に係る借地権を無償で返還するというような特別の事情も存しないことからすれば、その敷地については、同族会社の借地権が存在すると認めるのが相当であるという判断を示した。審査請求の内容に応じて、全部取消し、一部取消し、さらに棄却という裁決結果になった。(2019.08.19国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2020.06.22 15:21:46