HOME ニュース一覧 昨年9月の判決に続き、マイナンバーの利用差止請求を棄却

税ニュース

昨年9月の判決に続き、マイナンバーの利用差止請求を棄却

 特別定額給付金の支給に伴い話題を集めたマイナンバー制度(個人番号制度)の利用だが、番号制度の利用差止請求訴訟が相次ぐ中、東京地裁(男澤聡子裁判長)は昨年9月の類似訴訟の判決結果と同様、個人番号制度によって直ちに平穏に生活する権利等が侵害されたとは認められないという判断、個人番号制度の導入によって権利等が侵害されたものと認めることは困難であると判示して、利用差止請求を棄却した。

 この事件は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(いわゆる番号利用法)に基づき、住民基本台帳に記録されている住民に対して個人識別性を持つ個人番号を付与、その住民の同意なく個人番号を含む個人情報を収集・保存・利用及び提供する制度を構築・運用したことは、プライバシー権(自己情報コントロール権)等を侵害する結果、憲法13条に違反すると主張して、国に個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに番号の削除を求めるとともに、国家賠償法に基づくプライバシー権等の侵害によって被った精神的苦痛に対する慰謝料及び弁護士費用等の支払いを求めて提訴された事案である。

 争点は、1)個人番号制度が憲法13条で保障されたプライバシー権等を侵害するか、2)権利の侵害が認められる場合に個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め等の請求が認められるか、さらに3)国家賠償請求権に基づく損害の発生及びその額が主になっているが、憲法13条に基づく私生活上の自由の一環として、個人に関する情報をみだりに第三者に収集、保存、利用及び提供されない自由が保障されていることを理由に、マイナンバーの利用差止と損害賠償を求めて提訴したわけだ。

 これに対して判決はまず、個人番号制度の構造、番号利用法の概要、番号利用法の目的、番号利用法の基本理念、さらに個人情報保護委員会の所掌事務等を整理、解釈した上で、個人番号制度上の各種の安全対策自体は、一応、有効・適切に機能しており、具体的な危険が生じているとはいえないと指摘した。

 また、個人番号を付番された個人に関する原告らの、個人の私生活上の自由の一つとしての個人に関する情報がみだりに収集若しくは利用され、かつ第三者に開示若しくは公表されない自由が侵害されているとも認められないという判断を示した。

 結局、番号利用法に基づくマイナンバーが番号を付与された者らの権利等を侵害するものとは認められないと判示して、いずれの請求も棄却した。

(2020.02.25東京地裁判決、平成27年(ワ)第34010号(第1事件)、平成28年(ワ)第9404号(第2事件))

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

「期限付酒類小売業免許」の活用事例を公表

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2020/img/img_zei_01_s.jpg
 特別定額給付金の支給に伴い話題を集めたマイナンバー制度(個人番号制度)の利用だが、番号制度の利用差止請求訴訟が相次ぐ中、東京地裁(男澤聡子裁判長)は昨年9月の類似訴訟の判決結果と同様、個人番号制度によって直ちに平穏に生活する権利等が侵害されたとは認められないという判断、個人番号制度の導入によって権利等が侵害されたものと認めることは困難であると判示して、利用差止請求を棄却した。 この事件は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(いわゆる番号利用法)に基づき、住民基本台帳に記録されている住民に対して個人識別性を持つ個人番号を付与、その住民の同意なく個人番号を含む個人情報を収集・保存・利用及び提供する制度を構築・運用したことは、プライバシー権(自己情報コントロール権)等を侵害する結果、憲法13条に違反すると主張して、国に個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに番号の削除を求めるとともに、国家賠償法に基づくプライバシー権等の侵害によって被った精神的苦痛に対する慰謝料及び弁護士費用等の支払いを求めて提訴された事案である。 争点は、1)個人番号制度が憲法13条で保障されたプライバシー権等を侵害するか、2)権利の侵害が認められる場合に個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め等の請求が認められるか、さらに3)国家賠償請求権に基づく損害の発生及びその額が主になっているが、憲法13条に基づく私生活上の自由の一環として、個人に関する情報をみだりに第三者に収集、保存、利用及び提供されない自由が保障されていることを理由に、マイナンバーの利用差止と損害賠償を求めて提訴したわけだ。 これに対して判決はまず、個人番号制度の構造、番号利用法の概要、番号利用法の目的、番号利用法の基本理念、さらに個人情報保護委員会の所掌事務等を整理、解釈した上で、個人番号制度上の各種の安全対策自体は、一応、有効・適切に機能しており、具体的な危険が生じているとはいえないと指摘した。 また、個人番号を付番された個人に関する原告らの、個人の私生活上の自由の一つとしての個人に関する情報がみだりに収集若しくは利用され、かつ第三者に開示若しくは公表されない自由が侵害されているとも認められないという判断を示した。 結局、番号利用法に基づくマイナンバーが番号を付与された者らの権利等を侵害するものとは認められないと判示して、いずれの請求も棄却した。(2020.02.25東京地裁判決、平成27年(ワ)第34010号(第1事件)、平成28年(ワ)第9404号(第2事件))提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2020.06.08 16:39:59