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不納付加算税は憲法14条等には違反していないと判示して棄却


 源泉所得税に係る不納付加算税を定めた国税通則法67条1項、2項の規定、併せて不納付加算税の賦課決定処分に同項を適用することが違憲か否かの判断が争われた事件で東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は、同条の趣旨及び目的は法定納期限までに完納すべき義務の違反の発生を防止し、源泉徴収制度の適正な運用の実現を図るという行政上の制裁措置であることから正当であると指摘した上で、不納付加算税の目的との関係で著しく不合理であるとはいえず、憲法14条等に違反するともいえないと判示して、弁護士側の請求を斥けた。

 この事件は、弁護士業を営む者が青色事業専従者に支払った給与等の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(源泉所得税)の合計額について、法定納期限を徒過して納付したことを理由に原処分庁から国税通則法67条1項、2項に基づく不納付加算税の賦課決定処分を受けたため、弁護士側が通則法67条2項は憲法14条、22条1項、29条及び31条に違反する、また加算税額は出資法をはるかに超える利率で賦課されているから執行を差し控えるべきであり、通則法67条2項の適用は違憲である、さらに執行を差し控える権限がないのであればその処分は比例原則に違反するなどと主張して、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり弁護士側は、不納付加算税は法定納期限に1日でも遅れた場合に課されるものであることから、支払いまでの遅延期間を問わず一律に同じ割合の加算税を課すと、場合によっては、いわゆる出資法に定められた利率をはるかに超える利率で加算税を課すことになる場合もあり、税の支払いを遅延した場合に課される制裁金としての性格を持つ延滞税が支払いを遅延した期間に応じて課されていることと比較して著しく高い税額を課されることになるから、憲法上要請される比例原則の趣旨に違反していると主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 これに対して判決は、租税立法は立法目的が正当で、その立法において具体的に採用された区別の態様が著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、憲法14条1項に違反するものということはできないと昭和60年3月27日の最高裁判決を引き合いに解釈を示した上で、通則法67条の不納付加算税は、源泉徴収による国税が法定納期限までに完納されなかったという客観的な事実があれば、原則、源泉徴収義務者に課されるものであり、法定納期限までに完納した者との間の不公平の実質的な是正を図り、法定納期限までに完納すべき義務違反の発生を防止して源泉徴収制度の適正な運用の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の制裁措置であると指摘。結局、同条が不納付加算税の目的との関係で著しく不合理であるとはいえず、憲法14条等に違反するとはいえないと判示して棄却した。

                   (2019.03.22東京地裁判決、課税処分取消請求事件)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 源泉所得税に係る不納付加算税を定めた国税通則法67条1項、2項の規定、併せて不納付加算税の賦課決定処分に同項を適用することが違憲か否かの判断が争われた事件で東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は、同条の趣旨及び目的は法定納期限までに完納すべき義務の違反の発生を防止し、源泉徴収制度の適正な運用の実現を図るという行政上の制裁措置であることから正当であると指摘した上で、不納付加算税の目的との関係で著しく不合理であるとはいえず、憲法14条等に違反するともいえないと判示して、弁護士側の請求を斥けた。 この事件は、弁護士業を営む者が青色事業専従者に支払った給与等の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(源泉所得税)の合計額について、法定納期限を徒過して納付したことを理由に原処分庁から国税通則法67条1項、2項に基づく不納付加算税の賦課決定処分を受けたため、弁護士側が通則法67条2項は憲法14条、22条1項、29条及び31条に違反する、また加算税額は出資法をはるかに超える利率で賦課されているから執行を差し控えるべきであり、通則法67条2項の適用は違憲である、さらに執行を差し控える権限がないのであればその処分は比例原則に違反するなどと主張して、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。 つまり弁護士側は、不納付加算税は法定納期限に1日でも遅れた場合に課されるものであることから、支払いまでの遅延期間を問わず一律に同じ割合の加算税を課すと、場合によっては、いわゆる出資法に定められた利率をはるかに超える利率で加算税を課すことになる場合もあり、税の支払いを遅延した場合に課される制裁金としての性格を持つ延滞税が支払いを遅延した期間に応じて課されていることと比較して著しく高い税額を課されることになるから、憲法上要請される比例原則の趣旨に違反していると主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。 これに対して判決は、租税立法は立法目的が正当で、その立法において具体的に採用された区別の態様が著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、憲法14条1項に違反するものということはできないと昭和60年3月27日の最高裁判決を引き合いに解釈を示した上で、通則法67条の不納付加算税は、源泉徴収による国税が法定納期限までに完納されなかったという客観的な事実があれば、原則、源泉徴収義務者に課されるものであり、法定納期限までに完納した者との間の不公平の実質的な是正を図り、法定納期限までに完納すべき義務違反の発生を防止して源泉徴収制度の適正な運用の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の制裁措置であると指摘。結局、同条が不納付加算税の目的との関係で著しく不合理であるとはいえず、憲法14条等に違反するとはいえないと判示して棄却した。                   (2019.03.22東京地裁判決、課税処分取消請求事件)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2020.03.23 17:01:08