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預け金返還請求権は相続財産には当たらないと判断、全部取消し

 相続人名義預金に入金された資金及び上場株式の購入資金の運用から生じた化体財産が過去に被相続人から相続人に贈与されたものであるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、相続開始日に被相続人が相続人に対して株式等の購入資金相当額の預け金返還請求権を有していたとは認められないことから相続財産には当たらないと判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、被相続人の共同相続人(審査請求人)ら3名が行った相続税の申告を巡って、原処分庁が相続人のうちの1人の名義の預金口座に入金された資金及び上場株式の購入資金に相当する預け金返還請求権を被相続人の相続財産であると判断、相続税の更正処分等をしてきたため、それらの資金は被相続人から相続人の1人に過去に贈与されたものであるから相続財産には当たらないと主張して、更正処分等の全部又は一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、審査請求人の1人である相続人名義の銀行口座に入金された資金及び上場株式の購入資金の合計について、資金の原資(資金となる直前の財産)が被相続人に帰属するものと認められ、被相続人と相続人との間で贈与やその他の債権債務関係があったとは認められないことから、被相続人は相続人に対して資金相当額の預け金返還請求権を有していたことから相続財産に該当すると主張して、請求の棄却を求めた。

 しかし裁決は、1)資金及び資金の原資の管理運用は被相続人が行っていたものであり、そうであれば資金を預金口座に入金したり、その後、相続人名義の上場株式の購入資金に充てたりしたことは財産の管理運用の一環として、相続人の名義で被相続人が実質的に行っていたものと認められる、2)過去に資金の運用から生じた化体財産は被相続人から相続人に贈与されていた――などの事実関係を指摘。

 その上で、そもそも資金相当額の預け金返還請求権の存在はおろか発生していたとすらいえないと認定した。したがって、被相続人は、相続開始日において、相続人に対する資金相当額の預け金返還請求権を有していたとは認められないことから相続財産には該当しないと判断して、原処分を全部取り消している。

                        (2018.08.22 国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 相続人名義預金に入金された資金及び上場株式の購入資金の運用から生じた化体財産が過去に被相続人から相続人に贈与されたものであるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、相続開始日に被相続人が相続人に対して株式等の購入資金相当額の預け金返還請求権を有していたとは認められないことから相続財産には当たらないと判断、原処分を全部取り消した。 この事件は、被相続人の共同相続人(審査請求人)ら3名が行った相続税の申告を巡って、原処分庁が相続人のうちの1人の名義の預金口座に入金された資金及び上場株式の購入資金に相当する預け金返還請求権を被相続人の相続財産であると判断、相続税の更正処分等をしてきたため、それらの資金は被相続人から相続人の1人に過去に贈与されたものであるから相続財産には当たらないと主張して、更正処分等の全部又は一部取消しを求めて審査請求したという事案である。 原処分庁側は、審査請求人の1人である相続人名義の銀行口座に入金された資金及び上場株式の購入資金の合計について、資金の原資(資金となる直前の財産)が被相続人に帰属するものと認められ、被相続人と相続人との間で贈与やその他の債権債務関係があったとは認められないことから、被相続人は相続人に対して資金相当額の預け金返還請求権を有していたことから相続財産に該当すると主張して、請求の棄却を求めた。 しかし裁決は、1)資金及び資金の原資の管理運用は被相続人が行っていたものであり、そうであれば資金を預金口座に入金したり、その後、相続人名義の上場株式の購入資金に充てたりしたことは財産の管理運用の一環として、相続人の名義で被相続人が実質的に行っていたものと認められる、2)過去に資金の運用から生じた化体財産は被相続人から相続人に贈与されていた――などの事実関係を指摘。 その上で、そもそも資金相当額の預け金返還請求権の存在はおろか発生していたとすらいえないと認定した。したがって、被相続人は、相続開始日において、相続人に対する資金相当額の預け金返還請求権を有していたとは認められないことから相続財産には該当しないと判断して、原処分を全部取り消している。                        (2018.08.22 国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2019.04.15 15:41:41