日本企業による海外M&Aの傾向と対策
グローバル化が進み日本企業による海外M&Aが増加傾向にある中、経済産業省は4月9日、日本企業による海外M&A実態調査報告書をまとめた。「海外M&Aと日本企業~M&Aの最前線に立つ国内外の企業の声からひもとく課題克服の可能性~」と題する報告書は、日本企業が激しいグローバル競争環境の中で十分に成果を得るための対策等をまとめたもの。
それによると、日本企業の課題は「グローバル経営力の不足」、「グローバル経営の制度・仕組みの未整備」、「M&Aプロセス全体を意識した『型』作りの不備」の3点。
海外M&Aでは、異なる言語・文化・商慣習・制度を有する海外企業を買収し経営管理していく必要があるため、グローバルで共通とされる経営力を備え、かつ、グローバルで多く取り入れられ、当たり前とされている制度や仕組みに対応することが不可欠であり、国内M&Aとは大きく異なる。また、M&Aを行う際の戦略から検討・実行、買収後の経営管理までの一連のプロセスの型を持っているかという点も問われている。
報告書ではこうした課題への対応として、言語力、異なる企業文化への適合力の強化、コーポレートガバナンスへの対応、グローバルスタンダードの報酬制度。M&Aへの取組みにかかわる組織体制の構築などを掲げ、海外の具体例等を提示した。
また、調査を通じて吸い上げられた国への要望として、高度専門スキルを持つ外国人経営層に対する日本居住の税制インセンティブの設計や、海外子会社従業員、経営陣に対する日本の親会社株式売却時の税制、ストックオプション行使時の手続きの簡素化、高機能自動翻訳機の開発促進のための税制優遇、ITシステム設備投資の税制優遇等、税制インフラの整備の必要性についても盛り込んでいる。
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)