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事業所得の該当性を認定した上で訴訟費用等の経費性も認定

 宅地等分譲事業を共に実施した法人から宅地等分譲に係る損失負担金の支払いを求める訴えを提起された納税者が、訴訟の結果その法人側に支払った損失負担金、弁護士費用及び訴訟費用の必要経費性の判断が争われた事件で東京地裁(林俊之裁判長)は、宅地等分譲に伴う利益の分配を受けることによる所得は事業所得に当たり、損失負担金はそのための必要経費になると判断するとともに、訴訟に要した弁護士費用、訴訟費用も業務遂行上必要な経費に当たると認定して、納税者側の主張を認容する判決を言い渡した。

 この事件は、遊技業を営む者が宅地分譲等を業とする法人と共に実施した宅地等分譲により生じた損失負担金の支払いを求める訴えを法人側から起こされ、訴訟の結果、法人側に宅地等分譲に係る損失負担金を支払ったことを踏まえ、その損失負担金とともに訴訟に係る弁護士費用及び訴訟費用を事業所得に係る必要経費に算入して所得税の申告をするとともに、弁護士費用を消費税法上の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等の申告をしたのが発端。

 この申告に対して原処分庁が、宅地等分譲は法人の単独事業であると認定した上で、所得税及び消費税等に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、納税者側が原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 法人と共に実施した宅地等分譲が事業所得に該当するか、事業所得に該当するとした場合、損失負担金を必要経費として控除できるか、また弁護士費用は消費税の課税仕入れに係る支払対価に該当するか否かが争点になった事案であるが、宅地等分譲が事業所得に該当するか否かがそもそものポイントになった。

 判決は、まず宅地等分譲が事業所得に当たる否かを審理し、宅地分譲等の重要な意思決定に関わることのできる立場にあったと評価した上で、宅地分譲等によって生じた利益の分配を受けることに係る所得区分は事業所得に当たると認定、訴訟を受けて支払った損失負担金は必要経費に該当すると判示した。

 また、訴訟に要した弁護士費用及び訴訟費用についても、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な費用に当たると認定した。事業所得を生ずべき業務には宅地分譲を業とする法人から受ける利益及び損失の分配に係るものも含まれるという判断からだ。

 一方、法人側との損失の負担に係る別件訴訟に関する費用についても、弁護士に委任して役務の提供を受けることも業務の遂行に必要なものであるから、課税仕入れに係る支払対価に当たる判断して、納税者側の主張を認容している。

               (2018.01.23東京地裁判決、平成26年(行ウ)第351号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 宅地等分譲事業を共に実施した法人から宅地等分譲に係る損失負担金の支払いを求める訴えを提起された納税者が、訴訟の結果その法人側に支払った損失負担金、弁護士費用及び訴訟費用の必要経費性の判断が争われた事件で東京地裁(林俊之裁判長)は、宅地等分譲に伴う利益の分配を受けることによる所得は事業所得に当たり、損失負担金はそのための必要経費になると判断するとともに、訴訟に要した弁護士費用、訴訟費用も業務遂行上必要な経費に当たると認定して、納税者側の主張を認容する判決を言い渡した。 この事件は、遊技業を営む者が宅地分譲等を業とする法人と共に実施した宅地等分譲により生じた損失負担金の支払いを求める訴えを法人側から起こされ、訴訟の結果、法人側に宅地等分譲に係る損失負担金を支払ったことを踏まえ、その損失負担金とともに訴訟に係る弁護士費用及び訴訟費用を事業所得に係る必要経費に算入して所得税の申告をするとともに、弁護士費用を消費税法上の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等の申告をしたのが発端。 この申告に対して原処分庁が、宅地等分譲は法人の単独事業であると認定した上で、所得税及び消費税等に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、納税者側が原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。 法人と共に実施した宅地等分譲が事業所得に該当するか、事業所得に該当するとした場合、損失負担金を必要経費として控除できるか、また弁護士費用は消費税の課税仕入れに係る支払対価に該当するか否かが争点になった事案であるが、宅地等分譲が事業所得に該当するか否かがそもそものポイントになった。 判決は、まず宅地等分譲が事業所得に当たる否かを審理し、宅地分譲等の重要な意思決定に関わることのできる立場にあったと評価した上で、宅地分譲等によって生じた利益の分配を受けることに係る所得区分は事業所得に当たると認定、訴訟を受けて支払った損失負担金は必要経費に該当すると判示した。 また、訴訟に要した弁護士費用及び訴訟費用についても、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な費用に当たると認定した。事業所得を生ずべき業務には宅地分譲を業とする法人から受ける利益及び損失の分配に係るものも含まれるという判断からだ。 一方、法人側との損失の負担に係る別件訴訟に関する費用についても、弁護士に委任して役務の提供を受けることも業務の遂行に必要なものであるから、課税仕入れに係る支払対価に当たる判断して、納税者側の主張を認容している。               (2018.01.23東京地裁判決、平成26年(行ウ)第351号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2019.03.04 16:30:19