増税時のポイント還元 不正利用の懸念 拙速な制度設計で予算オーバーも?
2019年10月の消費増税に伴う景気対策として導入するキャッシュレス決済時のポイント還元制度について、不正利用の懸念が政府内で広がっている。複数の対象店舗で転売を繰り返してポイントを際限なく手に入れるなどの手法が警戒されている。政府は、決済業者と連携して対策に乗り出す考えだが、実効性は見通せない。
ポイント還元制度は、中小店舗を対象に、消費者がキャッシュレス決済で購入すると、決済額の最大5%がポイント還元される仕組みだ。還元にかかる費用は国が負担する。
しかし、例えばA社がある商品をB社に売り、B社がC社に、そしてC社が最初のA社へと循環するようにキャッシュレス決済で売買を繰り返せば決済の度に5%分のポイントが付与される懸念がある。本来対象ではない大規模企業が仕入れ専門の中小規模のペーパーカンパニーなどを作る可能性も懸念されている。
所管する経済産業省によると、クレジットカードなどのキャッシュレス事業者には、自前のポイント付与などに絡み、不正取引を検知するシステムがあり、国も情報共有しながら不正利用がないか調べる構えだ。しかし、大手カード会社によれば、「カード決済情報は、どこで買ったかは分かっても何を買ったかまでは分からない。追跡には限界がある」(関係者)のが実情だ。
ポイント還元制度関連では、来年度関連予算として2798億円を計上している。だが、不正利用が広がれば、大きく枠を超える可能性もある。ある政府関係者は、「消費増税による景気後退を懸念する官邸に『そんたく』した財務省と経産省の一部の幹部がリスクに目をつぶって制度設計を急いだ」と怒りを隠さない。
提供元:エヌピー通信社