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法人名義の取引の収益等は代表者が享受していたと認定、棄却

 法人名義の取引の収益及び対価は代表者が享受すべきものか否か、また所得税及び消費税が無申告だったことに隠蔽又は仮装、偽りその他不正の行為が存在するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(古田孝夫裁判長)は、関係法人は単なる名義人にすぎず、収益及び対価は代表者が享受していたと認定するとともに、隠蔽又は仮装の行為、偽りその他不正の行為によって所得税等の税額を免れたとも判示して、代表者側の請求を棄却した。

 この事件は、原処分庁が法人名義で行った各取引の収益及び対価を全て代表者個人が享受する収益及び対価と認定した上で、代表者に対して所得税の決定処分及び重加算税の賦課決定処分さらに消費税等の決定処分並びに重加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。

 そこで代表者側が、これらの処分は原処分庁の事実誤認に基づくものであり、国税通則法68条2項及び国税通則法70条5項の解釈適用を誤ったものでもあるから違法である旨主張して、その取消しを求めて提訴したという事案である。

 判決はまず、調査段階で、個人による取引は信用性の観点から支障が生ずるため、便宜上法人名で取引する必要があったことから、形式上法人が各取引を行ったように装っていたが、実際には個人で行っていた旨を申述していることを踏まえ、むしろ、その申述のほうが法人の運営状況や取引が行われた客観的な状況に符合すると指摘した。

 その上で、各取引において関係法人は単なる名義人であり、その収益及び対価は代表者が享受していたものというべきであるから、各取引は代表者個人が行い、その収益は代表者に帰属するものとして、所得税法及び消費税法を適用するのが相当と判示した。

 にもかかわらず、各取引について、関係法人の名義を用いて契約書等を作成し、あたかも法人が取引を行ったかのような外形を作出するとともに、帳簿書類を作成・保存せず、さらに経費に係る領収書の一部を廃棄するなどして、各取引の収益及び対価の享受に係る事実を隠蔽し、又は仮装したものといえるから、所得税及び消費税等の無申告に隠蔽又は仮装の行為が存すると認定。以上のことから、偽りその他不正の行為により所得税及び消費税等の税額を免れた場合にも該当すると判示して、代表者側の主張を全面的に斥けた。

 (2017.10.18東京地裁判決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 法人名義の取引の収益及び対価は代表者が享受すべきものか否か、また所得税及び消費税が無申告だったことに隠蔽又は仮装、偽りその他不正の行為が存在するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(古田孝夫裁判長)は、関係法人は単なる名義人にすぎず、収益及び対価は代表者が享受していたと認定するとともに、隠蔽又は仮装の行為、偽りその他不正の行為によって所得税等の税額を免れたとも判示して、代表者側の請求を棄却した。 この事件は、原処分庁が法人名義で行った各取引の収益及び対価を全て代表者個人が享受する収益及び対価と認定した上で、代表者に対して所得税の決定処分及び重加算税の賦課決定処分さらに消費税等の決定処分並びに重加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。 そこで代表者側が、これらの処分は原処分庁の事実誤認に基づくものであり、国税通則法68条2項及び国税通則法70条5項の解釈適用を誤ったものでもあるから違法である旨主張して、その取消しを求めて提訴したという事案である。 判決はまず、調査段階で、個人による取引は信用性の観点から支障が生ずるため、便宜上法人名で取引する必要があったことから、形式上法人が各取引を行ったように装っていたが、実際には個人で行っていた旨を申述していることを踏まえ、むしろ、その申述のほうが法人の運営状況や取引が行われた客観的な状況に符合すると指摘した。 その上で、各取引において関係法人は単なる名義人であり、その収益及び対価は代表者が享受していたものというべきであるから、各取引は代表者個人が行い、その収益は代表者に帰属するものとして、所得税法及び消費税法を適用するのが相当と判示した。 にもかかわらず、各取引について、関係法人の名義を用いて契約書等を作成し、あたかも法人が取引を行ったかのような外形を作出するとともに、帳簿書類を作成・保存せず、さらに経費に係る領収書の一部を廃棄するなどして、各取引の収益及び対価の享受に係る事実を隠蔽し、又は仮装したものといえるから、所得税及び消費税等の無申告に隠蔽又は仮装の行為が存すると認定。以上のことから、偽りその他不正の行為により所得税及び消費税等の税額を免れた場合にも該当すると判示して、代表者側の主張を全面的に斥けた。 (2017.10.18東京地裁判決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2018.11.26 16:15:59