会計事務所経営戦略レポート

社長に好かれる事務所・社長に嫌われる事務所の経営法則

お客様に喜ばれるために、永続経営を目指しましょう

 お客様が集まり、従業員も集まり、事業を拡大していくために必要な要素は、もう一つあります。それは、『永続経営を目指し、それを実行に移すこと』です。先程も記しましたように、お客様や従業員は、事務所経営基盤が揺らぐことに敏感です。逆に言うと、『この事務所はしっかりした経営を行っているから安全』『この事務所は経営基盤がしっかりしていて、将来の見通しも明るいから安心して働ける』ということなのです。

 そういう事務所づくりが、これから求められています。そのためには、以下のステージ別の取組みを参考にしていただけるといいかと存じます。


★売上5千万円〜1億円の事務所

 このステージに必要なことは、一にも二にも「マーケティング力の強化」です。具体的には、税務に加えてそれ以外の商品・サービスを付加し、そのビジネスモデルに取組み、お客様を増やしていくことに集中しています。私が主宰する会計事務所経営研究会の会員さんで、成果を挙げているモデルとしては、経理代行モデル、新規法人フルサポートモデル、相続関連フルサポートモデルの3つが代表的なものになります。その他にも、お客様の売上アップをサポートする「プチコンサルモデル」やニッチテーマを徹底的に絞り込んだ「テーマ特化モデル」などが挙げられます。

 どのモデルに取り組むかは、商圏環境やその事務所の力を鑑みなくてはなりませんが、とにかくこのステージは、新しいビジネスモデルにチャレンジし、お客様を増やして業績を上げることに集中しなくてはならないのです。大げさでなく、これ以外のことに取り組んではいけません。そして、もし仮に短期的に業績が上がらなかったとしても、トップが決めたことをトップ自身が信じて、成果を出すまであきらめないことが求められます。


★売上1億円〜3億円の事務所

 このステージにおける課題は、業績を上げることと、現場に権限を委譲し、能動的に現場が動く環境を作ることに集中しています。つまり、業績アップのためには、今取り組んでいるビジネスモデルをさらに進化させて効率を上げていくこと、さらに新しいビジネスモデルにチャレンジすること、そして、それを行うメンバーは、トップの指示の下、自主的かつ能動的に行うようにすることです。

 つまり、売上5千万円〜1億円の事務所が行うべきことを、現場の社員を主体に進めていくことが必要なのです。ここでのトップの役割は、現場への権限移譲を進め、大きな方向性を誤らないように導くことであり、細かいことに口出しをしてはいけません。つまり、やせ我慢が必要なのです。

 そして、もう一つ重要なことは、次のステージである「地域一番店を目指す」という明確な意思決定を行い、そのことを社員にしっかり伝えることです。


売上3億円を突破し、5億・10億・圧倒的地域一番店、グレートカンパニーを目指している事務所

 このステージの事務所の最大のテーマは、一言で言うと「徹底力」です。既に、自社独自のビジネスモデルが完成いつつある状況ですから、そのビジネスモデルの精度を高めることはもちろん、その徹底力を磨きこむことです。

 事務所のミッション・ビジュンを明確にし、3年後の目標、今年の目標を立て、それを実行するための月ごとのアクションプランを作り、半期・四半期・月・週・日ごとに、行うべきこととその成果を検証しながら、すばやく行動の修正を行う・・・PDCAサイクルを高回転でまわしていくことが必要です。

 もちろん中心になるのは、現場のリーダーです。目安としては、1億円の売上を達成するリーダーが複数人いるイメージです。そして次の展開としては、そのリーダーが異なるエリアへの出店責任者となって、そこで新たな地域一番店を目指していく・・・

 そのための、組織体制、採用・教育・経営管理の仕組み(システム化も含む)、コミュニケーション体制を構築することが必要なのです。

 このように、皆様の事務所がどのステージにいるかによって、取り組むべき項目と優先順位は、大きく異なっていきます。しかし、私の現場感覚としては、この「取り組むべきこと」とトップがやりていこと(もしくは、やろうとしていること)のミスマッチが、多くの会計事務所では起こっています。

 そして、そのやり方は、事務所ごとに異なります。今、会計事務所業界では、チェーンストア理論に基づく、ナショナルネットワークへの加盟が促進され、簡単に売上が上がるような風潮がありますが、今の時代、一つのビジネスフォーマットが全国で成功することのほうが不自然です。つまり、地域性やその事務所ならではの強みを活かし、商圏環境や競合環境を見据えた上で、その事務所独自の取組みを行わなければ、絶対に業績はあがりません。

 言い換えれば、「楽して業績が上がる時代」ではないのです。正しい戦略、正しい経営が求められているのです。そして、会計事務所が正しい戦略、正しい経営を行うことで、顧問先の経営者が、皆さまの経営をモデルとし、業績を上げていくこと・・・。先の見えない日本という国を、日の出る国に復活させるためにも、皆さまの役割は大きいと言わざるを得ません。

 このレポートが少しでも、皆さまの事務所経営にお役に立てば、幸甚に存じます。

 最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


株式会社 船井総合研究所 竹内実門


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