目次 VII-4


4 「保険年金」に係る最高裁判決を受けた対応

イ 相続又は贈与等に係る保険年金の保険金受取人等に対する特別還付金の支給

  遺族が年金として受給する生命保険金のうち相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならないとする最高裁判所の判決(平成22年7月6日)を受けて、納めすぎとなっている所得税について改正前の税法の下で還付することができない年分におけるその所得税相当額の特別な還付を行うために特別還付金を支給する措置が講じられました。(措法97の2)

特別還付金の支給 税務署長は、相続又は贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金(以下「保険年金」といいます。)の受取人である者又はその相続人に対し、平成12年分以後の各年分の保険年金に係る所得(以下「保険年金所得」といいます。)のうち所得税が課されない部分の金額に対応する所得税に相当する給付金(以下「特別還付金」といいます。)を支給します。ただし、当該年分の所得税について、国税通則法の規定による更正を行うことができる場合又は期限後申告書を提出することができる場合は除かれました。
支給の手続き 特別還付金の支給を受けようとする者は、平成23年6月30日から1年間、特別還付金の額等を記載した特別還付金請求書に特別還付金額の計算明細書等を添付して税務署長に提出することができることとされました。 税務署長は、必要な事項を調査し、支給額(特別還付金請求書に記載された金額を限度とします。)を決定し、その提出者に対し通知します。
特別還付金と加算金の額 特別還付金の額は、その年分に応じて次に掲げる金額とします。特別還付金の額には、次の区分に応じて還付加算金に相当する加算金が加算されます。
(a)平成15年分以後の各年分
  [a] その年分の所得税につき申告書を提出している者
 その申告書に係る所得税額から保険年金所得に対する取扱い変更後の所得税額を控除した金額
 (注) 「取扱い変更」とは、最高裁判決を受けて、現行税法に基づき納めすぎとなっている所得税を還付するために、本年10月にされた保険年金所得を所得税の課税部分と非課税部分に振り分けるための所得計算の見直し(所得税法施行令の改正)による課税の取扱いの変更をいいます。
  [b] その年分の所得税につき申告書を提出していない者
 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額(取扱い変更後において還付すべき税額がある場合に限ります。)
  (i)  保険年金所得に対する取扱い変更前の所得税額から当該変更後の所得税額を控除した金額
  (ii)  保険年金所得の所得減少額の10%相当額
 
 (注) 「所得減少額」とは、その年分の保険年金所得に対する取扱い変更前の所得金額から当該変更後の所得金額を控除した金額をいいます。
(b)平成12年分から平成14年分の各年分
  [a] 保険年金の最終支払年が平成15年以後である者
 その年分の保険年金所得の所得減少額に平成15年分のみなし特別還付金割合を乗じて計算した金額
 (注) 「みなし特別還付金割合」とは、その年分の保険年金の所得減少額のうちにみなし特別還付金基準額(その年分の保険年金に係る上記[a]の(i)又は(ii)に掲げる金額のいずれか多い金額をいいます。以下同じです。)の占める割合をいいます。
  [b] 保険年金の最終支払年が平成12年から平成14年である者
  (i)  最終支払年分最終支払年分の保険年金所得を平成15年分の保険年金所得とみなして計算したみなし特別還付金基準額
  (ii)  最終支払年分以外の年分その年分の保険年金所得の所得減少額に最終支払年分の保険年金所得を平成15年分の保険年金所得とみなして計算したみなし特別還付金割合を乗じて計算した金額
非課税措置 特別還付金(加算金を含みます。)については、所得税及び個人住民税を課さないこととされました。
特別還付金額の変更 税務署長は、その決定した特別還付金の額が過大又は過少であることを知った場合には、当該特別還付金額の変更の決定をすることができることとされました。特別還付金の減額の決定があったときは、その決定を受けた者は、その減額分の特別還付金(対応する加算金を含みます。)を、1か月以内に納付しなければならないこととされました。なお、期限までに完納しない場合には、延滞税に相当する延滞金が課されます。
その他
(a)  税務署長の決定は、平成23年6月30日から2年を経過した後は行うことができないものとし、特別還付金の支給を受ける権利及び特別還付金を徴収する権利は、2年間行使しないことによって、時効により消滅することとされました。
(b)  特別還付金請求書の提出、税務署長の決定及び通知、特別還付金の支払又は納付その他の特別還付金に関する事項については、国税通則法及び国税徴収法の規定が準用されました。
(c)  特別還付金の支給に関し、国税職員の質問検査権及び義務違反に対する罰則の整備が行われました。
(d)  その他所要の措置が講じられました。


ロ 相続又は贈与等に係る保険年金の保険金受取人等に係る更正の請求の特例

 上記の措置と併せて、改正前の税法に基づいて所得税の還付を受けるため、その年分の所得税の申告をしている保険年金の受取人である者は、その年分の所得のうちに保険年金所得が含まれていることにより当該申告に係る課税標準等又は税額等が過大であるときは、平成23年6月30日から1年間、税務署長に対し、更正の請求を行うことができる特例措置が講じられました。

 

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