目次 第1章 第1節 2


(2) 「この通達の定めによって評価した価額による」こと

 土地の価格の評価方法にも各種のものがありますが、評価通達で定める時価とは、評価通達の規定にしたがって評価した価額です。評価通達に基づく評価額は課税庁から否認されることはありませんが、これ以外の方法に基づくものは、たとえ一般経済社会で信頼されている評価方法でも、無条件で容認されることはない、といえるでしょう。

 ところで、評価通達では、土地等の評価に関する規定だけでも116項に及び、土地の価格形成要因に応じた評価方法を定めています。このような評価通達の詳細な規定と路線価等の土地の評価水準が公示価格水準の時価の80%相当額であることを勘案すると、評価通達の規定を的確に適用することにより、一般的には納税者にとっては妥当な評価額を得ることができるものと思われます。

 このことから、相続税の土地評価の実務に携わる者にとっての第一の重要な職務は、周到な不動産調査により評価対象土地の価格形成要因を調べ上げ、その要因に応じて的確に評価通達の各規定を適用することであるといえるでしょう。

 もっとも、評価通達の規定は、土地の価格形成要因についてあらかじめ類型的に規定できるものについて定めたものですから、万能でないことは当然ですし、一律に適用するという通達の性格上やむを得ません。たとえば、評価通達20−2に定める無道路地の評価方法が妥当しないような通路の確保が事実上不可能な無道路地とか、市街化調整区域に所在するため評価通達24−4「広大地の評価」の要件に該当せず、かつその規模から市場性に著しく劣る状況にある広大な土地などについては、いわば評価通達の射程距離の範囲外にあるものといえます。

 このように評価通達の射程距離の範囲外にある土地については、評価通達の適用では適正な評価額を得ることはできません。このような場合には、不動産鑑定士が行う不動産鑑定評価によるべきでしょう。

 評価対象土地の個別性の程度を判定し、当該土地が「評価通達の射程距離の範囲外に位置するものではないか」ということを検証するのも評価実務に携わる者の重要な職務です。

 

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