目次 II-5(3)


(3) 貸家建付地(借家権の目的となっている家屋の敷地の用に供されている宅地)

 土地所有者が建物を建築して、その建物を賃貸している場合は、その建物の敷地は借家人に間接的に使用収益させていることになるため、下記の計算式によって計算した価額を自用地価額から控除して、貸家建付地として評価します。

 その宅地の
 自用地価額
× 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合

 このうち、借地権については、借地権が権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にあるものについては評価しないことになっていますが、この貸家建付地の評価の際にはその地域の借地権割合を20%として計算します。

 また、借家権については、借家権が権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にあるものについても財産評価基準書/評価倍率表の“家屋及び借家権”の項に記載されている割合で計算します。
 上記算式の「賃貸割合」は、その貸家に係る各独立部分がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合によります。

Aのうち課税時期において
賃貸されている各独立部分の床面積の合計
その家屋の各独立部分の床面積の合計(A)

 なお、「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるもののことをいいます。
 例えば、ふすま、障子又はベニヤ板等の堅固でないものによって仕切られている部分であるとか、階層で区分されていても独立した出入口を有しない部分は、「各独立部分」には該当しません。
 ただし、外部に接する出入口を有しない部分であっても、共同で使用すべき廊下、階段、エレベーター等の共用部分のみを通って外部と出入りすることができる構造となっているものは、「独立した出入口を有するもの」に該当します。
 「賃貸されている各独立部分」とは、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められるものについては、賃貸されている部分に含むこととすることができます。
 課税時期において一時的に空室であったと認められるかどうかについては、次のような事実関係から総合的に判断することとされています。

(1)  各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
(2)  賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
(3)  空室の期間他の用途に供されていないかどうか
(4)  空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であるかどうか
(5)  課税時期後の賃貸が一時的なものでないかどうか

 しかし、この賃貸割合については、個人がその個人の同族法人に1棟ごと賃貸し、同族法人が第三者に転貸している場合等、転貸先での賃貸割合が100%でない場合どう取り扱われるかは明確になっていません。そういったケースについては、個別に検討する必要があると思われます。

 

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