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労災保険の特別加入制度 |
このたび、当社の社員A氏を3年間の予定で海外駐在させます。同業他社から、日本の労災保険には、海外駐在員向けに「海外派遣者特別加入」という制度があると聞きました。そもそもこの制度はどういった内容なのでしょうか。また加入に当たり、費用はどのくらいかかるのでしょうか。 |
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労災保険は、日本国内にある事業所に所属して働く労働者が保険給付の対象となる制度であるため、海外の事業所に出向や派遣などで働く人の労災事故については対象外となります。しかし、海外で勤務する人についても労災保険の給付が受けられる制度として「海外派遣者特別加入制度」があり、費用は年間5,110円〜36,500円となります。 1.特別加入の対象者は? 〜現地採用者や留学する人は対象外〜 労災保険は、日本国内で行われる事業のみを対象としていますが、海外で行われる事業に従事する場合、図表4−1に該当する人に限り特別加入が認められています。(労働者災害補償保険法第33条第6号、第7号) また、特別加入に当たっては、新たに海外に駐在する人に限らず、既に海外に勤務している人についても加入することができます。ただし、現地採用の人は、日本国内の事業から派遣されていないことから、特別加入することはできません。(また、単なる留学を目的とした派遣の場合も、特別加入の対象外となります。) 図表4−1 海外派遣者として特別加入の対象になる者
2.保険料は? 〜最高でも年間36,500円〜 特別加入者の保険料は、図表4−2のとおり、保険料算定基礎額に保険料率を乗じた額で、最低で年間5,110円、最高でも年間36,500円です。(なお、2013年1月に起きたアルジェリア邦人に対するテロ事件を踏まえ、2013年9月より海外派遣者の給付基礎日額の上限が引き上げられています。) 保険料算定基礎額とは、特別加入者ごとの給付基礎日額の1年分(365日分)を指し、給付基礎日額とは、労災保険の給付額を算定する基礎となる金額で、通常、特別加入する人の年収を365で割った金額に一番近い額を選ぶことになります。 また、海外派遣者が、年度途中において、新たに特別加入者となった場合や、特別加入者でなくなった場合には、当該年度内の特別加入月数に応じた保険料算定基礎額より、特別加入の保険料を算出することになります。 図表4−2 給付基礎日額・保険料一覧表
3.実際に海外で労災事故に遭った場合は? 〜補償の対象となるのは特別加入の申請時に記載した業務内容のみ〜 国内勤務時同様に、業務災害、通勤災害の補償が受けられますが、その範囲は、申請時に提出した特別加入者名簿に記載された「業務内容」の範囲に限られます。そのため、当該名簿に記載した「業務内容」は、実際に海外で事故が起きた場合、その事故が業務上で起きたものか否かを判断をする上で、重要な事項になりますので正確に記入することが必要です。 4.海外出張時は労災の特別加入の必要はないか? 〜基本的には特別加入の必要はないが、「出張」の定義をよく確認することが必要〜 海外出張時に労働災害を受けた場合は、出張命令を出した出張元の国内事業所の労災保険により給付が受けられますので、特別加入を行う必要はありません(昭和52.3.30付基発第192号)。 ただし、ここでいう「海外出張」とは、単に労働の提供の場が海外にあるに過ぎず、国内の事業所に所属し、当該事業所の使用者の指揮命令に従って勤務するケースを指します。 ですから、現地の事業所の指揮命令に従って行動する人については、図表4−3のとおり、たとえその海外勤務期間が短期間でも「海外出張」とはみなされませんので注意が必要です。 図表4−3 海外出張と海外派遣の具体例
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