目次 事例 2


 (事例2) 土地賃貸借契約書


土地賃貸借契約書

 貸主甲と借主乙は、下記のとおり、土地の賃貸借契約をここに締結する。
 第1条 甲は、乙に資材置き場としての用地として、次に定める土地を賃貸することとする。
 物件の所在地 ○○市××町2丁目
 第2条 土地の賃借料として、月額200,000円を、乙は、甲に対して支払うものとし、前月末迄に、甲の指定する方法により支払うものとする。なお、契約開始月の賃借料の200,000円については、本日、支払うものとし、甲はこれを受領した。
 第3条 契約に際して、乙が甲に対して支払う保証金、権利金等の金銭の授受は一切ないものとする。
 第4条 この契約の契約期間が終了した際において、甲は、乙に対して、契約の対象となっている本土地を、譲り渡すこととし、双方、これに同意した。この場合の価額については、譲渡時の価額とすることに合意した。
 第5条 ………。



【 解 説 】

【1】  この事例の場合、契約内容は、一定の賃料を支払いながら土地を借りるということと、土地の賃貸借に際しては賃借権が設定されるという事実関係から、「土地の賃借権の設定事実」を証明していることになります。これは、別表第一に掲げる第1号文書の2(地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書)に該当します。

【2】  また、この契約書の第4条において「契約期間終了時に、当該土地を賃借人に譲渡することとする」という内容の記載がありますが、これは「不動産の譲渡」の予約ですから、別表第一に掲げる第1号文書の1(不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書)に該当することになります。ここで、譲渡予定の金額の記載がなければ、記載金額のない契約書ということになります(予約が契約に含まれることは、後の項で説明します。)。

【3】  また、これも記載金額の項で説明しますが、土地の賃借権の設定に関する契約書の記載金額は、あくまでも土地の賃借権の設定に対する対価であり、例えば、返還不要の保証金、権利金、礼金その他の金銭などがこれに当たることになります。毎月の賃貸料は単なる使用収益の対価ですから、記載金額には当たらないことに留意してください。

【4】  この文書は、同時に2種類の課税事項を証明していることになり、複数の課税文書に該当するので、このような場合には一つの課税文書に決定する必要があります。これを一つに決定するための規定(課税物件表の適用に関する通則)2及び3がありますが、後で説明します。

 したがって、この事例2の文書は第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)に該当し、記載金額のない契約書となります。


 前掲の基通第3条第1項の後段及び同第2項が、具体的にどのようなことを想定しているのかについてですが、この条文においては「記載文言の実質的な意義」について規定されており、この通達の規定の解釈は難しいと考えられます。

 そこで、この意義について検討していきます。


 印紙税は、一般的には「文書課税」といわれています。しかし、文書をその記載文言から実質的な意義に基づいて判断するとなると、「文書課税」を逸脱してしまうように思われます。

 そこで、この条文を分解して考えてみることにします。

 大きく分けると、

(1) 文書に記載、表示されている文言、符号を基とすること

(2)  その文言、符号を用いることについての関係法律の規定、当事者間における了解、基本契約又は慣習等を加味すること

の2点になります。

 まず、(1)の「文書に記載、表示されている文言、符号を基とする」とは、文書に記載されている文言をそのまま字句のみをとらえて判断することをせずに、その文言は検討する材料である、ということを示しています。

 次に、その文言等を記載することに関して、当然に何らかの根拠があるであろうからその根拠となる法律の規定、当事者間での了解事項、基本契約の内容、慣習などがあれば、それらを参考にする、もしくは引用するということを示しています。

 このことを以下、事例を基に解説していきます。

 

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