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3.所得計算のしくみ |
損益計算と所得計算の食い違い項目には種々のものがありますが、代表例は次のとおりです。 (1) 受取配当金………………「収益であるが益金ではない」 企業会計上、受取配当金は収益(一般に営業外収益)です。ところが税理論上、これは益金になりません。なぜなら、配当は税引き後の利益からなされるものであり、投資先ですでに課税されている利益を、配当として受け入れた側で益金扱いすると、再度これに課税され二重課税となってしまうからです。 一つの所得に対する課税は一回限り、というのが所得課税の税金(法人税や所得税)の大原則です。そこで申告調整により、食い違いを解消することになります。 (2) 交際費………………「費用であるが損金ではない」 交際費は、主として得意先との取引関係を密にし売上げを伸ばすために支出されます。企業会計上、費用は収益を得るため犠牲になるもの、つまり売上げを上げるのに要するコストですから、その意味では交際費は典型的な費用項目といえます。 ところが税務では、「冗費の節約」(無駄遣いはやめよう)と「資本の蓄積」(そのお金を会社に貯めよう)という観点から、交際費を損金と認めない扱いをしています。つまりこれは受取配当金のような税理論上の話ではなく、政策的な扱いによる食い違い項目です。 (3) 減価償却費の限度超過額………………「費用であるが損金ではない」 企業会計上、正確な期間損益計算を行うため適正な費用配分の観点から、所要額の減価償却が実施されます。ところが税務上は課税の公平化の観点から、支出をともなわない計算上の費用項目については画一的な処理を要求し、個別事情を考慮した企業会計上の計算結果をそのまま損金とは認めません。 したがって、たとえば損益計算上1,000万円の減価償却費を計上しても、税務上認められる償却限度が800万円だとすれば、限度超過部分の200万円については費用であるが損金にはなりません。同様のことが、引当金繰入額についてもいえます。 さて、所得は益金から損金を控除した金額ですが(法22(1))、現実には、損益計算から全く離れたところで再度所得計算を行う、というようなことはしません。益金と損金は、大部分が収益や費用と合致しているので、損益計算の結果求められた当期利益の金額を受けて、これに食い違い項目(申告調整事項)をプラス・マイナス(加算・減算)するかたちで行われます。 申告調整事項には、次の4種類のものがあります。
当期利益からスタートして所得金額を計算する際に、(1)と(4)は加算し、(2)と(3)は減算します。 上記の調整項目の分類を図示すれば、次のとおりです。 |