目次 II-12


 12 居住用財産を譲渡した場合(特別控除)

(1)概要

 個人が、その居住の用に供している家屋を譲渡した場合、その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡(譲渡とみなされる不動産の貸付けも含みます。以下同じ)をした場合又は居住の用に供していた家屋又は土地等をこれらの家屋が居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合には、その譲渡所得の金額から3,000万円の特別控除を行うことができるとされています。

 ただし、この特例は、既に前年又は前々年において、(1)この特別控除の適用を受けている場合又は(2)居住用財産の買換え(交換)の特例の適用を受けている場合には適用がありません。

 なお、この特例は、店舗併用住宅であっても居住用部分については特別控除が認められ、また、資産の譲渡とみなされる借地権の設定の場合にも適用されます。


(2)要件のポイント

 (イ)  現に居住している家屋(店舗併用住宅などは、所有者が居住の用に使用している部分に限られます)又はその家屋と一緒にその敷地(土地又は借地権)を譲渡する場合に適用がある。
 (ロ)  現に居住している家屋が2以上ある場合は、そのうち主として居住している家屋を譲渡した場合にだけ適用がある。
 (ハ)  転勤などのため、家屋の所有者が一時的にそこに居住していない場合であっても、配偶者等が引き続きその建物に居住している場合には適用がある。
 (ニ)  自分が居住していた家屋を空家や貸家にしている場合でも、所有者が居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合には適用がある。
 (ホ)  この特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる家屋には、適用がない。
 (ヘ)  居住用家屋の改築期間中や新築期間中だけの仮住いである家屋や別荘などには適用できない。
 (ト)  譲渡した居住用財産の譲受者が、配偶者や直系血族、自分と生計を一にしている特別の関係にある者、一定の同族会社である場合には、適用がない。
 (チ)  家屋を曳き家して敷地だけを譲渡する場合又は家屋はそのままで敷地の一部(例えば庭先)だけを譲渡する場合には、適用はない。


(3)譲渡所得の計算

 この特例を受ける場合の譲渡所得の計算は、次のようにします。

(1)長期譲渡所得の場合

  収入金額−(取得費+譲渡費用)=長期譲渡所得の金額

 長期譲渡所得の金額−特別控除額(3,000万円)=課税長期譲渡所得金額

(2)短期譲渡所得の場合

 収入金額−(取得費+譲渡費用)=短期譲渡所得の金額

 短期譲渡所得の金額−特別控除額(3,000万円)=課税短期譲渡所得金額

   ※1  この特例は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例が受けられる場合には、特別控除額を控除した後の譲渡所得金額に対して適用されます。
   ※2  居住用財産の譲渡所得のなかに短期譲渡所得と長期譲渡所得とがある場合の3,000万円の特別控除額は、まず短期譲渡所得から控除します。


(4)申告手続

 居住用財産の3,000万円控除の特例の適用を受ける場合には、譲渡した年分の確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法35条」と記載するとともに、次の書類を添付しなければなりません。

 (イ)  譲渡所得計算明細書
 (ロ)  居住用財産を譲渡した日から2か月を経過した日後にその譲渡した財産の所在地の市区町村長から交付を受けた譲渡者の住民票の写し(その譲渡後他の市区町村に転出した人は,転出前の市区町村長から交付を受けた除票住民票の写し)
   ※  3,000万円の特別控除額を控除した結果、課税長期(短期)譲渡所得金額が0になる場合であっても、この特例の適用を受けるためには、必ず確定申告書を提出しなければなりません。

 

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