目次 II-11


 11 居住用財産を譲渡した場合(軽課税率)

(1)概要

 譲渡の年の1月1日において所有期間が10年を超える自己の居住用財産(居住用家屋やその敷地)を譲渡した場合には、その居住用財産の譲渡に係る課税長期譲渡所得に対して軽減税率が適用されます。

 ただし、この軽減税率の適用には、(イ)既に前年又は前々年において、この特例の適用を受けていないこと、(ロ)居住用財産の買換え(交換)の特例の適用を受けていないこと、その他一定の要件があり、これを満たさなければなりません。


(2)要件のポイント
  
 (イ)  所有者が現に居住している家屋(店舗併用住宅などは、所有者が居住の用に使用している部分に限られます)又はその家屋と一緒にその敷地(土地又は借地権)を譲渡する場合に適用がある。
 (ロ)  (イ)の家屋又は敷地は、譲渡の年の1月1日において所有期間が10年を超えていなければ適用がない。
 (ハ)  現に居住している家屋が2以上ある場合は、そのうち主として居住している家屋を譲渡した場合にだけ適用がある。
 (ニ)  転勤などのため、家屋の所有者が一時的にそこに居住していない場合であっても、配偶者等が引き続きその建物に居住している場合には適用がある。
 (ホ)  自分が居住していた家屋を空家や貸家にしている場合でも、所有者が居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合には適用がある。
 (ヘ)  譲渡した居住用財産の譲受者が、配偶者や直系血族、自分と生計を一にしている特別の関係にある者、一定の同族会社である場合には、適用がない。
 (ト)  家屋を曳き家して敷地だけを譲渡する場合又は家屋はそのままで敷地の一部(例えば庭先)だけを譲渡する場合には、適用はない。
 (チ)  「12 居住用財産を譲渡した場合」の3,000万円控除の特例と併用して適用することができる。


(3)譲渡所得及び税額の計算

 課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分は10%(住民税は別途4%)の税率により、6,000万円を超える部分は15%(住民税は別途5%)の税率により課税されます。

 この特例を受ける場合の譲渡所得の計算は、次のようにします。

(1)長期譲渡所得の場合

  収入金額−(取得費+譲渡費用)=長期譲渡所得の金額

  長期譲渡所得の金額−特別控除額(3,000万円)=課税長期譲渡所得金額

(2)所得税、住民税額

(イ) 課税長期譲渡所得が6,000万円以下の場合

課税長期譲渡所得×14%(国税10%、地方税4%)

(ロ) 課税長期譲渡所得が6,000万円を超える場合

課税長期譲渡所得×20%(国税15%、地方税5%)−360万円

   ※1  この特例は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例が受けられる場合には、特別控除額を控除した後の譲渡所得金額に対して適用されます。
   ※2  この特例は、所有期間が10年超であることを要していますので、譲渡所得は長期譲渡所得になります。


(4)申告手続

 この特例の適用を受けるには、確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法31条の3」と記載するとともに、次の書類を添付しなければなりません。

 (イ)  譲渡した居住用財産の登記簿謄本(抄本)又は閉鎖登記簿謄本(抄本)
 (ロ)  居住用財産を譲渡した日から2か月を経過した日後にその譲渡した財産の所在地の市区町村長から交付を受けた譲渡者の住民票の写し

 

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