遺産分割協議がまとまらない期間の法定果実の帰属先

リエ「黒田さん、こんにちは。複数の相続人が賃貸不動産を相続した場合のお話なのですが、遺言がなければ遺産分割協議によって取得者を決めるのですよね?」
黒田「はい。被相続人の財産は、遺言がなければ遺産分割協議、つまり相続人全員の話合いよってその帰属先を決めることになります。」
リエ「遺産分割協議がまとまらない期間でも賃貸不動産から賃料収入は発生します。その期間の賃料収入は相続人のうち誰が取得することになるのでしょうか?」
黒田「遺産分割協議がまとまらない期間の相続財産は未分割の状態になります。この場合の権利関係は共有となり、複数の相続人は法定相続分でそれぞれ持ち分を取得することになります。そのため賃貸不動産から生じる賃料収入については、未分割の状態である限り、法定相続分で取得したとしてそれぞれが確定申告を行うことになります。」
リエ「そうなのですね。では、遺産分割協議がまとまった場合に未分割の期間の不動産収入はどのような扱いになりますか? 未分割の期間に法定相続分で賃料を取得していた他の相続人は、遺産分割協議で賃貸不動産の所有者となった相続人に返金しなければならないのでしょうか? その場合遡って更正の請求や修正申告をしなければならないのでしょうか?」
黒田「たしかに遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずると民法909条に定めがあります。しかしこれはあくまでも相続財産の話です。賃貸不動産から生ずる賃料収入、つまり法定果実にまでも民法909条の適用が及ぶかが問題になります。
これは実際過去に争われていて未分割の期間の法定果実は、法定相続分で確定的に取得し、後の遺産分割協議成立の影響を受けないという最高裁の判決がでています。」
リエ「未分割の期間に生じる賃料収入は相続人の遺産ではないため法定相続分で相続人それぞれが取得し、後で遺産分割協議がまとまったとしても影響は受けないということですね。」
黒田「はい。その通りです。そのため、未分割の期間に法定相続分で取得した賃料収入を遺産分割協議がまとまったからといって返金することもありませんし、修正申告や更正の請求をすることもできません。」
リエ「はい、ありがとうございました。」