詐欺被害の経理処理
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リエ「黒田さんこんにちは。直接弊社のことではないのですが、ご質問してもよろしいでしょうか。」
黒田「リエちゃんこんにちは。何でしょうか。」
リエ「長いお付き合いのある会社さんなのですが、先日詐欺被害にあってしまったそうなんです。ご高齢の社長さんがお一人で切り盛りしてらっしゃるのですが、騙されてしまったと落ち込んでいらして。」
黒田「それは大変ですね。犯人に心当たりはあるのでしょうか。」
リエ「相手は全く知らない人で、連絡先等も架空だったようです。警察にはすぐに相談して、被害届も出したそうなんですが、返金は期待できないと言われたそうです。」
黒田「そうなんですね。」
リエ「会社の金庫の現金を渡してしまったとお聞きしているのですが、これは特別損失としてよいのでしょうか。堅実に経営している会社さんですし、実際にお金が無くなっているので、せめて損金算入して法人税を減らしたいですよね。」
黒田「まず被害額に関しては特別損失として経理処理をし、損金算入となります。ただし、他人の不法行為により損害を受けた場合には、その損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得することになります。返金を受ける権利は、被害にあったと同時に発生する、ということです。」
リエ「なるほど、被害額は返してもらえるものだということですか。確かにそうかもしれませんが、権利があっても返金される可能性はかなり低いと思います。犯人が見つかっても、お金は使い切っていて返せない、という話も聞いたことがありますよ。」
黒田「そうですね。今回の犯人は他の者、つまり被害にあった法人とは全く関係ない方ですから、法人税基本通達2-1-43の『法人がその損害賠償金の額について実際に支払いを受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める』の通り、実際に返金を受けた時に特別利益等に計上して益金算入すればよいと思います。」
リエ「それなら納得です。運よく返金があれば、その時に益金算入するのは仕方ないと思います。」
黒田「先方の社長さんとお話する機会があれば、警察に出した被害届番号はきちんと記録しておくようにお伝えください。」
リエ「わかりました、ありがとうございます。」