令和5年分確定申告の変更点
令和5年分確定申告における変更点
あゆみ:うちが仕事を頼んでいる個人で事業をやっている人がいるんだけど、年が明けると確定申告書を作成しなきゃいけないって悩んでいた。
ケン:別に悩む必要はないと思います。
毎年確定申告をされていれば、例年と同じように申告書を作成すればいいわけですから。
あゆみ:でもね、今年の確定申告で変更点はあるの?
ケン:大きな変更点はありませんが、小さな変更点はありますね。
それは主に次の3つです。
① 海外扶養親族の扶養控除の要件の改正
② 上場株式等に係る配当所得等・譲渡所得等の課税方式の統一
③ 特定非常災害に伴う損失の繰越期間の延長
海外扶養親族の扶養控除の要件の改正
あゆみ:海外扶養親族ってあまり関係ない気がするけど…。
ケン:確かにそうかもしれませんね。
子供が海外に留学したりとか、外国人の方が単身来日し日本国内で働いたりとかじゃないと当てはまらないかもしれません。
あゆみ:でも、海外に住んでいても扶養控除できるって知らなかった。
ケン:令和4年までは親族関係を証明して、かつ、ちょっとでも送金していれば扶養控除を適用できました。
それが、海外居住の30歳から69歳までの方については、原則扶養控除は適用できませんが、次のいずれかの要件を満たす方のみ扶養控除を適用できることとなりました。
(1) 海外留学している方
(2) 障害者
(3) 日本国内から年間38万円以上生活費等の名目で送金を受けている方
あゆみ:適用を受けるための手続きも変わっているの?
ケン:確定申告書の様式が変わっていて、扶養控除の国外居住の欄に数字を記載することになりました。
16歳以下または70歳以上・・・1
海外に留学・・・・・・・・・・2
障害者・・・・・・・・・・・・3
海外送金38万円以上の方・・・4
上記以外の方・・・・・・・・・5
5を記入される場合には扶養控除の適用はありません。
上場株式等に係る配当所得等・譲渡所得等の課税方式の統一
あゆみ:株式の売却や配当の課税方式の統一ってどういうこと?
ケン:特定口座にある株式の売却や配当は確定申告書に記載しない選択ができるのですが、例えば前年に損失が生じていてそれを今年度以降に繰り越す手続きを取っている場合に、今年度株式の売却に益が生じているときは、前年の損失との損益通算により税金が還付されます。
この場合、令和4年までは住民税についてその株式の売却や配当を申告しない選択ができました。
あゆみ:へー、そんな制度があったのね?
ケン:住民税の申告をすると、株式の売却益の収入により国民健康保険料が高額になるのですが、住民税を申告しない選択をすることで国民健康保険料が高騰することを防止できました。
ただ、これが令和5年分からできなくなり、株式の売却益について申告をすると住民税も申告することとなり、国民健康保険料が高騰します。
あゆみ:うちは社会保険だけど、影響ある?
ケン:社会保険料は給料から保険料が決められていますので、関係ありません。
あゆみ:確定申告での手続きに何か変更ある?
ケン:確定申告書第二表の「住民税」の欄に「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄があったのですが、令和5年からなくなっています。
したがって、所得税で株式の売却や配当収入を申告すれば住民税でも自動的に申告したことになりますので、注意が必要です。
特定非常災害に伴う損失の繰越期間の延長
あゆみ:災害に伴う損失って、地震とかで家が壊れたっていうのが当てはまる?
ケン:そうですね。
災害により家屋や家財に損失が生じた場合には、所得税法では雑損控除として所得控除の適用を受けたり、災害減免法の適用を受けたりすることができます。
令和4年までは特定非常災害に指定された災害や東日本大震災により、家屋や家財に損失が生じた場合に、雑損控除を適用しても引ききれない金額があるときは、翌年から3年間その損失を繰り越すことができたのですが、令和5年からは5年に延長されました。
あゆみ:今年の能登半島地震は特定非常災害に指定されたの?
ケン:指定されました。
今年度から確定申告書第四表付表㈠の用紙が追加されていますので、該当する場合には忘れずに付表を添付してください。
あゆみ:何か今回の改正は増税感があったけど、災害を受けた人への配慮があったからよかったわ。
ケン:そうですね。災害は忘れたころにやってきますので、常日頃から防災意識を持って生活しないといけませんね。