国庫補助金等の総収入金額不算入
リエ「黒田さんこんにちは。今年、私の叔父が固定資産を取得するために国から補助金をもらいました。ただし今年の確定申告で補助金に税金がかかることで固定資産の取得に支障が生じます。何かいい方法がないかと相談を受けています。以前会社の処理で圧縮記帳を行ったことがあります。叔父は個人事業主なのですが、法人と同様に圧縮記帳の規定を利用することはできるのでしょうか？」
黒田「圧縮記帳とは、一定の補助金等をもらった場合に、本来なら補助金等をもらった期にその補助金等に対しての課税がなされるところを将来にわたって課税を繰り延べる方法です。法人税法と租税特別措置法に規定されていますが、あくまでも法人での取扱いであって所得税法に圧縮記帳の規定はありません。そのため、個人事業主の方は圧縮記帳を受けることができません。」
リエ「えぇ、そうなのですか。それでは個人事業主の方は固定資産を取得するために補助金をもらっても、もらった年に補助金に対して多額の税金が発生してしまい、補助金を利用した固定資産の取得が困難になってしまいますよ。」
黒田「いいえ。そうではありませんよ。個人事業主の方は、圧縮記帳を使えませんが、代わりに“国庫補助金等の総収入金額不算入”という規定が所得税法４２条に用意されています。」
リエ「どのような規定なのでしょうか？」
黒田「はい。固定資産の取得などのために一定の国庫補助金等の交付を受け、その国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得などをした場合に、国庫補助金等のうちその固定資産の取得などに充てた部分の金額を総収入金額に算入しなくて良いという制度です。ただし、確定申告書に「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付することなどが必要になります。」
リエ「そうなのですね。個人事業主の方は、国庫補助金等の総収入金額不算入の規定を利用すれば、せっかくもらった補助金に対して、もらった年に多額の税金が発生するということは避けられますね。」
黒田「この規定を利用して取得した固定資産の額は、実際にその固定資産の取得のために要した金額などから総収入金額に算入されなかった国庫補助金等の額を控除した残額となります。減価償却費もこの残額を固定資産の取得価額として計算していく点に注意して下さいね。」
リエ「はい。ありがとうございました。さっそく叔父に伝えようと思います。」
