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修正申告と更正―当初申告した内容に誤りがあった場合の取扱い

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 税務調査の最終結果を受けて、申告内容に誤りなどがあれば、納税者が修正申告書を提出するか、税務当局が、更正(追加納税額を決め、納税者に通知をすること)をすることになります。
 更正を受けた場合に、納税者は、その結果に対して不服があるならば所轄税務署長などに対して再調査の請求をしたり、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。
 なお、税務調査の前に、申告内容に誤りなどがあることに気付いたら、一定の期間内に納税者は申告額に不足がある場合などは修正申告書の提出、申告額が過大である場合などは更正の請求を行うことができます。

1 申告、修正申告、更正など

 申告納税制度の下では、すべての納税者が正しい申告を期限内にできるとは限りません。そこで国税通則法では種々の制度を設けています。(通法19、23~27)

納税申告書を提出した者は、
❶申告書に記載した納税額が過少である場合などで、更正があるまでは、修正申告書*を提出してその税額等を修正することができます。修正申告書*は、自ら誤りを見つけて提出する場合もあれば、税務調査を受けて提出する場合もあります。ただし税務調査の結果を受けた場合でも、原則として修正申告書を提出した限りは、更正とは異なり不服申立てはできないので注意が必要です。(不服申立てについては下記3を参照してください。)
❷申告書に記載した納税額が過大である場合などで、更正があるまでは、更正の請求書*を提出して税額等の減額の更正を請求することができます。(更正の請求の期限については下記2を参照してください。)
* 令和4年度税制改正で、修正申告前及び更正の請求前の課税標準額等一定の記載(税務当局が当初申告等で既に保有している情報)が不要となり、修正申告書・更正の請求書の様式が変更されました。
税務署長等は、
❸更正の請求があった場合、その内容を調査して誤りがなければ更正を行います。
❹申告義務があるのに申告書の提出がない場合は決定を行います。*
❺提出された申告書に誤りがあれば更正を行います。*
❻一度決定又は更正を行った後に、再度その内容に誤りがあった場合には、再更正を行います。
* 更正又は決定の期間制限は、法定申告期限から5年を経過した日までとなります。なお、偽りその他不正行為がある場合の更正又は決定の場合には7年、純損失等の金額(欠損金額)の増減更正の場合には10年(平成30年3月31日以前に開始する事業年度分については9年)を経過した日までとなります。(通法70)
 移転価格税制に係る法人税の更正又は決定の場合は7年を経過した日までとなります。(措法66の4㉗)また、税務調査において納税者が指定された期限までに資料の提示等をせず、外国税務当局に対して情報交換要請が行われた場合の更正又は決定の期間期限(令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来するもの)は、情報交換要請に係る書面が発せられた日から3年間となります。なお、期間制限の到来する日前6か月以内にされた更正の請求に係る更正等については、更正の請求があった日から6か月を経過する日までとなります。(通法70③)

2 更正の請求の期限

 更正の請求は、次の事項に該当する場合に、原則として法定申告期限から5年以内*1に限り更正の請求書を提出することにより行うことができます。(通法23①)

更正の請求ができる場合 ①申告書に記載した納付税額が過大であるとき
②申告書に記載した欠損金額が過少であるとき
③申告書に記載した還付金の額が過少であるとき

 ただし、次のような後発的事由による場合は、上記にかかわらず次の期間内であれば更正の請求を行うことができます。(通法23②)

*1 贈与税(相法32②)の更正の請求の期限は6年、移転価格税制に係る法人税(措法66の4㉗)の更正の請求の期限は7年、法人税の純損失等の金額(欠損金額)の更正の請求の期限は10年(平成30年3月31日以前に開始する事業年度分については9年)となります。
*2 法令解釈が遡って変更され、異なる取扱いを受けることとなった場合も、やむを得ない理由の1つに含まれます。

<当初申告要件と更正の請求>

 受取配当等の益金不算入制度や所得税額控除制度などについて、当初申告要件が廃止され、当初申告でその適用を受けていないものであっても、更正の請求(又は修正申告書の提出)によって新たに適用を受けることや、当初申告で記載した金額を本来の正当額に変更することができるようになりました。

なお、更正の請求等に際しては、事実を証明する書類の添付が必要です。

3 更正の内容に不服があるとき

 税務署長等がした更正の内容に不服があるときは、次のような救済制度が設けられています。(通法75、77、114、115、行政事件訴訟法14)

* 再調査の請求及び審査請求をした後、3か月以内に再調査の請求に係る決定や審査請求による裁決がない場合には、それぞれ決定・裁決を経ないで、審査請求・訴訟をすることができます。

このコンテンツの内容は、令和5年6月30日現在の法令等によっています。

資料提供(出典)

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書名:令和5年版/図解・業務別 会社の税金実務必携

発行日:2023年9月7日
発行元:株式会社 清文社
規格:B5判 412頁
著者:税理士 公認会計士・税理士 溝端浩人 編著
   公認会計士・税理士 妙中茂樹 編著
   税理士 松本栄喜 編著
   公認会計士・税理士 城 知宏 編著

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2023.09.21 13:09:54