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ソフトウェアの取得と減価償却

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1 ソフトウェアの資産区分

(1)税法上の資産区分
 法人税法上、ソフトウェアについては減価償却資産のうちの「無形固定資産」に属するものとされています(法令13八リ)。
 したがってその取得に要した費用は、建物や機械装置など他の有形固定資産の取得に要した費用同様に支出時の損金ではなく、原則として減価償却の方法により一定期間において順次損金処理を行う必要があります。
(2)ソフトウェアの定義
 「ソフトウェア」の定義及び範囲について法人税法は特段の規定を置いていません。
 したがって、何をもって「ソフトウェア」と解するかについては、会計上の概念や法人税法以外の税法の規定などから判断する必要があります。
 企業会計では、ソフトウェアについて「コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム及びシステム仕様書、フローチャート等の関連文書」をいうものとされており、また、租税特別措置法施行令27の6条第1項では「電子計算機に対する指令であって一の結果を得ることができるように組み合わされたもの」と規定されています。

2 ソフトウェアの取得価額

 ソフトウェアの減価償却に当たっては、他の固定資産同様にまず、減価償却の基礎となるその取得価額を求める必要があります。
 ソフトウェアの様な無形固定資産を含むところの固定資産の取得価額については、法人税法施行令54条がそれぞれ次の様に規定しています。
(1)他から購入したソフトウェアの場合
 他から購入したソフトウェアについては、次に掲げる金額の合計額が取得価額となります。
① ソフトウェアの購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
② ソフトウェアを事業の用に供するために直接要した費用の額
 なお、ソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用が額は、ソフトウェアの取得価額に算入することになります。
(2)ソフトウェアを自社制作した場合
 ソフトウェアを自社制作した場合は、次に掲げる金額の合計額が取得価額となります。
① ソフトウェアの製作のために要した原材料費、労務費及び経費の額
② ソフトウェアを事業の用に供するために直接要した費用の額
 この場合の①のソフトウェアの製作に要した費用等としては、例えば、システムエンジニア等の人件費、委託外注費、開発のための機器の減価償却費やリース費などがその代表的なものとして挙げられ、一般的には、このように直接的に発生する原価のほか、間接的に発生する管理部門や補助部門の人件費や事務所家賃などの費用も製作原価に含まれることになります。
(3)取得価額に算入しないことができる費用
 次のような費用の額は、ソフトウェアの取得価額に算入しなくてよいものとされています。(基通7-3-15の3)。これらの費用をソフトウェアの取得価額に算入するかどうかは、法人の任意となります。
① 自己の製作するソフトウェアの制作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものの費用
② 研究開発費の額(自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかなものに限る)
③ 製作等のために要した間接費、付随費用等でその費用の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの
 上記②のとおり、ソフトウェアの研究開発費は原則として原価外処理することが認められます。
したがって、販売用のソフトウェアについては最初に製品化された製品マスター(複写可能な完成品)の完成までに要した費用は、研究開発費として費用処理し、ソフトウェアの取得価額に算入しなくてよいものとなります。
 これに対し、自社利用のソフトウェアの研究開発費については、その利用により将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかなものに限って、原価外処理が認められるものとされている点に留意が必要です。

3 ソフトウェアの取得価格に関する留意ポイント

<その1 製作を外部委託するケースも「自己の制作」>
 自己の製作に係るソフトウェアとは、もちろん自社の社員であるプログラマーやシステムエンジニアが製作するソフトウェアが典型的なものです。しかし、他の者に委託して製作するソフトウェアも市販されている既成品のソフトウェアの購入とは異なり自己の製作に係るソフトウェア含まれます。
 すなわち、委託製作によるソフトウェアの取得も、自社の社員はプログラム製作等に直接従事しないものの、自社が委託先に要望や指示を行い、自社の仕様に合うよう自社独自のソフトウェアを製作するものであり「自己の製作に係るソフトウェア」そのものに該当することになります。

<その2 打合費などの取得価額算入の要否>
 上記のとおり、委託製作は自己製作に含まれますから、ソフトウェアを製作するための原材料費、労務費及び経費の額が、そのソフトウェアの取得価額となります。したがって当社の担当者による委託先のプログラマーやシステムエンジニアとの打合せのための人件費や開発内容の指示、要望などのために要する人件費や各種経費も労務費や経費としてソフトウェアの取得価額に算入しなければならないことになります。

<その3 他から購入するソフトウェアの導入検討費用等>
 他の者から購入したソフトウェアの取得価額は、「その購入の代価」と「購入のために要した費用」との合計額に「事業の用に供するために直接要した費用の額」を加算した金額となります(令57①一)。
 従って、そのソフトウェアの導入にあたって必要とされる設定作業又は自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、その取得価額に算入しなければなりません(基通7-3-15の2(注))。これらの費用は、機械を購入した場合の据付費用や試運転の費用と同様の性格のものであり、機械のこれらの費用は取得価額に算入すべきものとされています。つまり、ソフトウェアを購入してから実際に事業の用に供するまでの間に要する費用に該当するものになります。
 ただ、ソフトウェアの導入のために行う各種の検討、分析の費用については、その検討、分析がそもそもどこのどのソフトウェアを購入するかといった、購入前に行われる場合には、その取得価額に算入する必要はないものと思われます。

4 ソフトウェアの償却方法及び耐用年数

(1)償却方法
 ソフトウェアの償却方法は、他の無形固定資産と同様に定額法によることになります。また、残存割合はゼロとして計算することになります。
(2)償却期間(耐用年数)
① 複写して販売するための原本…3年
② その他のもの       …5年
③ 研究開発用        …3年

5 各種の償却の特例とソフトウェアの適用

 固定資産の減価償却については、いくつかの特例制度がありますが、ソフトウェアへの適用については、次のとおりとされています。
① その取得価額が10万円未満のソフトウェアは、少額減価償却資産としてその取得価額の全額を一時に損金算入できます(令133)。
② その取得価額が10万円以上20万円未満のソフトウェアは、一括償却資産として3年間で均等償却をすることができます(令133の2)。
③ 中小企業者等(常時使用する従業員の数が500人以下の法人に限る)が平成18年4月1日から令和6年3月31日までの間に取得等をし、かつ、その法人の事業の用に供した取得価額が30万円未満のソフトウェアは、その取得価額の金額を一時に損金算入することができます。ただし、少額減価償却資産の取得価額の合計額300万円までに限られます(措法67の5)。

執筆者情報

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税理士 小畑 孝雄

昭和41年東京国税局入局、国税庁法人税課、国税不服審判所勤務等を経て平成16年東京国税局法人課税課長、18年同調査第2部長を歴任し19年退官、税理士登録(日本橋支部所属)

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2023.07.27 16:59:19