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建蔽率と容積率の違いをイメージで理解しよう。

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 今回は、建築初心者を対象として、建築基準法の「建蔽率」「容積率」についてイメージのしやすさを重視して、説明します。

 建蔽率と容積率という用語は日常的に聞く用語であり、いずれも「土地にどのくらいの大きさの建物を建てることができるのか判断するための指標」というものです。ただし、両者の規制の目的は似て非なるものです。

 建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積(水平投影した面積、すなわち建物を真上から見たときの面積)の割合を%で表したものです。例えば、建蔽率が50%の地域があったとすれば、100㎡の土地上に50㎡の建築面積を超える建築物を建築することができません。

 容積率とは、建物の延床面積(建築物の各階の床面積の合計)の敷地面積に対する割合を%で表したものです。例えば、容積率が500%の地域があったとすれば、100㎡の土地上に500㎡を超える延床面積の建築物を建築することができません。

 したがって、平屋(1階建ての建築物)の場合は、建築面積と延床面積は近い数値となります。

 両者が混同してしまう場合は、次のように考えていただくと、理解の助けになると思います。
 建蔽率は、主に建物の延焼防止を目的とした規制です。すなわち、建築物を隣地境界線ぎりぎりまで建ててしまうと、当該建築物に火災が発生した場合に、隣地の建築物に延焼してしまう可能性が高くなります。また、逆に隣地の建築物に火災が発生した場合に、当該建築物に延焼してしまう可能性も高くなります。さらに、土地上に十分なスペースがなければ、避難経路も確保できないかもしれません。そのため、隣地境界線ぎりぎりに建築物が建てられないよう、建蔽率による制限が課されているのです。
 ただし、建蔽率の主たる目的は延焼の防止ですので、例えば、耐火建築物など火災に強い建築物を建てる場合や、延焼が起こりにくい角地の場合は、建蔽率の規制が緩和されることがあります。また、駅前の商業地域など限られた範囲に多くの利用者が集まるような場所は、土地の有効活用が強く求められますので、耐火建築物とすることなどを条件として、建蔽率による規制がなくなることもあります(ただし防火地域、準防火地域)。

 一方、容積率は、防火の目的もありますが、人工集中を抑えること及び高層建築物の乱立防止が主たる目的です。
 例えば、閑静な住宅街に、突然、多くの延床面積をもつ超高層ビルが建てられて、多くの人が生活を始めると、騒音、渋滞、治安悪化など周囲の住環境に悪影響を及ぼしますし、都市インフラなども間に合わないかもしれません。
 また、狭い道路の脇に高層建築物が建築されると、道路の風通しや日照が悪くなり、閉塞感のある都市となってしまうおそれもあります。
 そのため、用途地域ごとにふさわしい容積率を定めて、想定外に多くの人口が集中するような建築物や、周辺に悪影響を与える高層建築物の建築を制限しているのです。なお、地下室やロフトなどは、一定の限度で、容積率の計算の基礎となる延床面積に算入しなくても良いという特例があります。

 建蔽率と容積率は別個の規制であるため、どちらか一方のみ遵守すれば良いというわけではなく、両者を充足する必要がありますので注意が必要です。

川上 修
平成18年 司法試験合格(60期)
令和4年 麻生建築&デザイン専門学校 建築学科 卒業
令和4年 一級建築士学科試験、同二級建築士学科試験 合格

執筆者情報

弁護士 川上 修

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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 今回は、建築初心者を対象として、建築基準法の「建蔽率」「容積率」についてイメージのしやすさを重視して、説明します。 建蔽率と容積率という用語は日常的に聞く用語であり、いずれも「土地にどのくらいの大きさの建物を建てることができるのか判断するための指標」というものです。ただし、両者の規制の目的は似て非なるものです。 建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積(水平投影した面積、すなわち建物を真上から見たときの面積)の割合を%で表したものです。例えば、建蔽率が50%の地域があったとすれば、100㎡の土地上に50㎡の建築面積を超える建築物を建築することができません。 容積率とは、建物の延床面積(建築物の各階の床面積の合計)の敷地面積に対する割合を%で表したものです。例えば、容積率が500%の地域があったとすれば、100㎡の土地上に500㎡を超える延床面積の建築物を建築することができません。 したがって、平屋(1階建ての建築物)の場合は、建築面積と延床面積は近い数値となります。 両者が混同してしまう場合は、次のように考えていただくと、理解の助けになると思います。 建蔽率は、主に建物の延焼防止を目的とした規制です。すなわち、建築物を隣地境界線ぎりぎりまで建ててしまうと、当該建築物に火災が発生した場合に、隣地の建築物に延焼してしまう可能性が高くなります。また、逆に隣地の建築物に火災が発生した場合に、当該建築物に延焼してしまう可能性も高くなります。さらに、土地上に十分なスペースがなければ、避難経路も確保できないかもしれません。そのため、隣地境界線ぎりぎりに建築物が建てられないよう、建蔽率による制限が課されているのです。 ただし、建蔽率の主たる目的は延焼の防止ですので、例えば、耐火建築物など火災に強い建築物を建てる場合や、延焼が起こりにくい角地の場合は、建蔽率の規制が緩和されることがあります。また、駅前の商業地域など限られた範囲に多くの利用者が集まるような場所は、土地の有効活用が強く求められますので、耐火建築物とすることなどを条件として、建蔽率による規制がなくなることもあります(ただし防火地域、準防火地域)。 一方、容積率は、防火の目的もありますが、人工集中を抑えること及び高層建築物の乱立防止が主たる目的です。 例えば、閑静な住宅街に、突然、多くの延床面積をもつ超高層ビルが建てられて、多くの人が生活を始めると、騒音、渋滞、治安悪化など周囲の住環境に悪影響を及ぼしますし、都市インフラなども間に合わないかもしれません。 また、狭い道路の脇に高層建築物が建築されると、道路の風通しや日照が悪くなり、閉塞感のある都市となってしまうおそれもあります。 そのため、用途地域ごとにふさわしい容積率を定めて、想定外に多くの人口が集中するような建築物や、周辺に悪影響を与える高層建築物の建築を制限しているのです。なお、地下室やロフトなどは、一定の限度で、容積率の計算の基礎となる延床面積に算入しなくても良いという特例があります。 建蔽率と容積率は別個の規制であるため、どちらか一方のみ遵守すれば良いというわけではなく、両者を充足する必要がありますので注意が必要です。川上 修平成18年 司法試験合格(60期)令和4年 麻生建築&デザイン専門学校 建築学科 卒業令和4年 一級建築士学科試験、同二級建築士学科試験 合格
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