生命保険を払済みに変更した場合
旭課長「黒田さん。ちょっとよろしいでしょうか?」
黒田「はい。何でしょう。」
旭課長「過去に利益対策で加入した生命保険が多くあり、保険料の支払いが厳しくなってきたので、いくつか解約しようとしたのですが保険会社の方から払済みに変更するのはどうでしょうと提案を受けました。どういうことでしょうか?」
黒田「払済みに変更した場合、保険期間は変わらずに、その後の保険料の支払いがなくなります。そして解約返戻率は少しずつ上がっていきます。ただし保険金額は減額され、変更時に解約返戻金は発生しません。」
リエ「保険金額は減額されてしまうので保障という面では不安ですけど、その後の保険料支払いがなくなるのはありがたいですね。」
黒田「はい。ただ税務的には既存の保険を一旦解約して、その解約返戻金を以って新たな一時払保険の保険料に充当したと考えます。そうなると原則的には払済みに変更した時点で解約返戻金を受け取っていないにもかかわらず、解約返戻金相当額からこれまでその保険契約により資産計上した金額を控除した差額を雑収入に計上し、一時払い保険料の分は資産に計上し期間の経過に応じて取り崩していくという洗替処理が必要です。」
旭課長「そうすると変更した事業年度で利益が出ると相当な法人税の負担が生じますね。」
黒田「そうですね。解約返戻金相当額が大きい場合は思わぬ利益が出てしまいますね。」
リエ「黒田さんは先程、原則的にはと仰いましたが例外もあるのですか?」
黒田「はい。通達では保険、終身保険、定期保険、第三分野保険及び年金保険(特約が付加されていないものに限る)から同種類の払済み保険に変更した場合に、既往の資産計上額を保険事故の発生または解約失効等により契約が終了するまで計上しているときは、これを認めるとありますので洗替処理してもしなくても結構です。」
旭課長「当社が払済みを検討しているのは定期保険ですので対象になるのですか?」
黒田「かつては養老保険、終身保険、年金保険が洗替処理不要の対象でしたが改正通達により2019年7月8日以後は定期保険、第三分野保険も対象となりました。ただ、先程も申した通り、洗替処理不要の要件としては特約が付加されていないことと同種類への払済み保険への変更であることです。各保険会社が様々な保険商品を取り扱っていますので洗替処理しなくても大丈夫なのかを保険会社に確認しておいたほうがよろしいかと思います。」
リエ「改正前に契約した保険でも大丈夫なのですか?」
黒田「はい。改正前に契約した保険でも2019年7月8日以後に払済みに変更した場合は改正後の取扱いによることとなります。」