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著作権法違反の責任

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第1 はじめに

 昨今のインターネットの普及により、より多くのクリエイターの作品を目にすることができるようになりました。
 しかし、それと同時に、作品の盗作や盗用といった著作権に関する問題も頻発しております。
 そこで今回は、著作権法に違反した場合にどのような責任を負うのか、という点に着目してお話していこうと思います。

第2 著作権法違反とは

 責任の内容に入る前に、どのような場合に著作権法違反となるのかおさらいしましょう。
 実は著作権とは、いくつかの権利をパッケージにした総称名なのです。細かく分けると著作権とは合計11個の支分権(著作財産権ともいいます)と4個の著作人格権に分類されます。代表的な権利は、複製権(勝手にコピーされない権利)や翻案権(勝手にアレンジされない権利)でしょうか。
 その他二次的著作物や近代アートの問題を絡めると、より複雑で面白い議論となるのですが、今回は趣旨を外れるため割愛させていただきます。
 話を戻すと、他人の作品をそのまま、又は真似した作品を利用して、上述した合計15個の権利のどれかの行為を勝手に行ってしまうと、著作権法違反として責任追及を受ける可能性があるということです。

第3 著作権法違反の責任

 では上述のような著作権侵害をするとどのような責任を負うのか解説させていただきます。まとめると以下のとおりです。
・損害賠償請求
・差止請求
・名誉回復措置等請求
・刑事罰
以下で詳しく見ていきます。

1 損害賠償請求

 金銭賠償をする責任です。ただし、著作権侵害について故意過失がなければ責任を負いません。賠償額については、①権利者の利益が減少した場合にはその減少額(著作権法第114条1項)、②侵害者が得た利益額(著作権法第114条2項)、③著作物使用料相当額(著作権法第114条3項)のいずれかで算定されます。権利者はこれらの規定を利用して損害を主張してきます。

2 差止め請求

 著作物の侵害を差し止めることです(著作権法112条1項)。こちらは侵害について故意過失は不要です。差し止められるだけであればいいのですが、著作侵害物を廃棄する責任(著作権法第112条2項)をも負う場合があります。廃棄にはかなりの費用や時間を要するため、損害賠償や差止めよりも負担の大きい責任かもしれません。

3 名誉回復措置等請求

 こちらは、本来の原作者の氏名や著作権を侵害したことに対する謝罪文を、侵害した人のSNS等で掲載する責任です(著作権法第115条)。故意過失が要件とされています。
 近年の出版会社は、損害賠償よりもこの氏名表示と謝罪文の掲載を重視しているように感じます(あくまで私の経験上ですが)。

4 刑事罰

 著作権侵害罪として、刑事罰に問われる場合です。行為態様によって法定刑は様々です。重いものだと、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金もありえます(著作権法第119条1項)。有名な漫画村事件(福岡地裁令和3年6月2日判決)では、懲役3年・罰金1000万円の判決が出たようです。

第4 実状について

1 著作権者の黙認

 上述のように、著作権侵害についてお話いたしましたが、実際には全ての著作権侵害事例が上述の責任を負っているわけではありません。
 それは、著作権者が「黙認」しているからです。すなわち、実際は著作権を侵害していても、何も言われない方は多くいらっしゃいます。
 黙認する理由は様々で、一種の宣伝効果を期待しているのかもしれませんし、全ての侵害事例に対応していては、時間と費用が足りない、という理由もあるのかもしれません。

2 実状の変化

 しかし、これまでと違って、最近では規制を厳しくする傾向にあるように感じます。
 特に最近では著作侵害者に対し、民事上の責任だけでなく、刑事上の責任まで問うケースが増えてきています。特に漫画村の事件を契機に、キャラクターに対する著作権を取り締まる動きが顕著に思えます。

第5 おわりに

 著作権を侵害しているかどうかの基準は、裁判例上も曖昧な部分もあり、現実的にどのような対応をすればいいのか判断の難しいケースが多いです。そのため、実際に著作権侵害のトラブルに巻き込まれた場合は、専門家のアドバイスを得ることをおすすめいたします。
 著作権侵害についてお困りでしたら、一度弊所へご相談ください。

執筆者情報

弁護士 畑田 将大

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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2022.07.29 16:06:33