任意継続被保険者制度の見直し
今日は守田社労士の訪問日です。
リエ「守田先生、こんにちは。この間、健康保険の任意継続が少し変わるって聞いたのですが、何が変わるのでしょう。」
守田「そうなんです、任意継続の見直しが2点ありますよ。まず1点目は、保険料の算定の元になる標準報酬月額ですが、現在は退職者本人の従前の標準報酬月額と、その健康保険組合の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額で決定されることになっています。それはご存じでしたか。」
リエ「はっきりとは覚えてないですけど、報酬が高かった人は保険料が安くなってお得というイメージがあります。ただ、事業主が負担していた分の保険料も自分で支払わないといけないんですよね。」
守田「その通りです。退職前の保険料の倍になりますから、標準報酬月額が少し低くなるくらいでは、あまりお得という実感は持てないと思いますよ。」
リエ「確かに、そうですね。それで、見直し後はどうなるのですか。」
守田「はい、見直し後は、健康保険組合の規約によって、従前の標準報酬月額で決定することも可能になります。」
リエ「え……、それでは、今以上に高くなるってことですか。」
守田「そうですね、平均の標準報酬月額と同じか、低い方は今まで通りですが、高い方については、標準報酬月額が低くなる可能性が少なくなります。」
リエ「退職者にとっては、デメリットしかないですよね。」
守田「後期高齢者医療がスタートしてから、健康保険組合も拠出金という形で費用の一部を負担しているのですが、その負担が大きくてどこも厳しい財政に悩まされています。今回の見直しはそれを考慮したのではないかと思います。健康保険組合の規約により見直しが可能となっていますので、おそらくほとんどの組合が規約を変更するとみられています。ただし、協会けんぽは組合ではないので対象外です。」
リエ「そういうことですか……確かに、健保組合がみんな破綻してしまったら大変ですしね。」
守田「そして、もう1点の見直しは、ようやく任意の資格喪失が認められることになります。」
リエ「ということは、いつでもやめられるんですね。」
守田「そうです。任意継続は退職後20日以内に申請しなければいけないので、慌てて書類を提出してしまう方も多く、いざ加入してから、やっぱり保険料が高いから国保に変えたいと思っても、その理由では喪失できなくて、原則として資格期間である2年間は加入し続けるしかなかったのです。家族の扶養に入り直すこともできなかったんですよ。」
リエ「そう考えると厳しい制度でしたね。」
守田「本当ですね。どちらも来年(令和4年)1月1日からの見直しとなります。退職後に国保にしようか任継にしようかとの質問を受けることも多いのですが、それぞれの保険料がいくらになるのか確認するのが早いです、と答えています。健康保険組合や自治体のホームページでも、保険料の計算方法は確認できますからね。特に退職後2年目は、前年の収入によって算定する国保の保険料額が減少することも多いですから、任継の方は、そこでもう一度確認して国保に切り替えることができるようになりますね。」
リエ「なるほど、そうですね。ありがとうございました。」