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給与明細のペーパーレス化による恩恵とは? 基礎知識(記載項目・計算方法)からメリットまで徹底解説!

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紙による給与明細の発行を廃止し、Web給与明細の配信に移行する企業が増えています。現在、課題とされている人事・労務担当者の業務負担はペーパーレス化することによって削減を見込めます。また、コスト削減やセキュリティ強化においても非常に有効です。今回は給与明細の基本知識(記載項目や作成方法、計算方法)からWeb給与明細によるペーパーレス化の実現まで解説します。

給与明細とは

給与明細とは、給与支払額・控除額・勤怠情報・社会保険料等を記載した通知書です。

所得税法第231条では給与支払明細書の交付が義務付けられていますが、給与明細は労働基準法上の発行義務は発生しません。

一方で給与明細に記載されている労働保険料は、健康保険法第167条第3項、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第32条第1項により控除額の通知が義務となっています。

そのため、法律上、企業は給与明細を発行・通知する義務があるといえます。

また、多くの企業が銀行振込による給与支払いを採用しています。

銀行振込による給与支払いでは、支給額(基本給や諸手当)や源泉所得税、社会保険料控除額を計算し、最終的な支給額を計算書に記入のうえ、従業員に交付しなければなりません。
※健康保険法 第167条3項:事業主は、前2項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない

給与明細(計算書)の基礎知識

給与明細を従業員に発行する際には、以下の項目を必ず記載します。

・基本給・各種手当(通勤手当や住宅手当、家族手当等)
・源泉徴収税額・社会保険料等、控除項目ごとの金額
・最終的に支払った金額(手取り金額)

給与計算の根拠となる情報が記載された書類(法定三帳簿)は保管義務があります。
※給与明細の保管義務はありません

給与明細の根拠となる保管義務書類 保管義務期間
法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿) 3年間
源泉徴収簿
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
7年間

事実上、給与明細の発行は義務となっています。そのため、従業員の入退社が頻繁な業界や、業種・事業所(支店)数・従業員数が多い、さまざまな雇用形態の人材を雇用している企業にとって、給与明細の発行は人事・労務担当者の業務負担をはじめ、多くのコストが発生しています。

一方で、給与明細の計算に必要な法定三帳簿(保管義務あり)と給与明細の発行手順を連携(一元管理)させることは、人事・労務担当者の業務負担を大幅に削減できます。

給与明細の記入項目

給与明細に記載される項目は、勤怠項目、支給項目、控除項目の3つに分類されます。

支給項目に示した総支給額から控除項目の合計額を差し引いた金額が、その月の口座振込額、従業員の手取りの給与額となります。

勤怠項目

勤怠とは、出勤や退勤、欠勤、休憩・休暇といった社員の出勤状況です。

給与明細には、出勤日数・欠勤日数・労働時間・残業時間や有給休暇取得日数・有休残日数などを明記します。

支給項目

給与明細の支給項目には、基本給・時間外手当(残業手当)・通勤手当・住宅手当・家族手当など各種手当の金額を明記します。

控除項目

控除とは、一定の金額を差し引くことです。

給与明細の控除項目には、給与から徴収した所得税や住民税、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料など社会保険料の控除額を明記します

また、控除項目には、以下の費用を記載できます。

給与明細に記載できる控除項目
・労働組合費
・積立金
・食事代
・財形貯蓄
・親睦会費

給与明細の集計・計算方法

給与明細は以下の6つの手順に沿って、集計・計算・記載したいものを給与明細として従業員に配付します。

1.労働時間の集計
2.課税支給額の計算
3.各種手当の計算
4.控除(社会保険料等)の計算
5.源泉所得税の計算
6.控除額の差し引き
7.手取り支給額を算出

1.労働時間の集計

労働時間は出退勤を記録したタイムカード・勤務表から算出した1カ月分を集計します。
※勤務日数・欠勤日数・有休取得日数・有休残日数も集計が必要です

2.課税支給額の計算

課税支給額は以下の計算式で算出します

課税支給額=A(基本給 + 時間外労働手当 - 欠勤・遅刻・早退) + B(各種手当)
※AとBの合計が課税支給額となります。

3.各種手当の計算

給与明細に記載する各種手当は住宅手当、通勤手当(定期代や切符代)、役職手当、皆勤手当、家族手当、扶養手当、単身赴任手当、勤務地手当、出張手当が該当します。また、各種手当は課税支給額とは別で計算しなければなりません。

4.控除(社会保険料等)の計算

控除対象は健康保険、介護保険、厚生年金保険などの社会保険、雇用保険、所得税、住民税、その他会社ごとの控除が対象となります。また、社会保険料はそれぞれ定められた保険料率を使用します。社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険)や雇用保険料の計算式は以下のとおりです。

【社会保険料等の計算式】
健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率÷2
厚生年金保険料=標準報酬月額×18.300%÷2
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率÷2
雇用保険料=給与額または賞与額×雇用保険料率

5.源泉所得税の計算

国税庁の源泉徴収税額表を基に所得税額を算出します。

複数社に勤務している従業員を含め、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員は甲、そうでない場合は乙の欄を確認します。

6.控除額の合計を計算

算出した社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険)、雇用保険料、所得税、住民税の控除と会社が独自に規定している控除の合計を算出します。

7.手取り支給額を算出

手取り支給額は課税支給額から控除額を差し引いた金額です。

手取り支給額=課税支給額 – 控除額

手取り支給額が確定したら、給与明細を発行します。

給与明細のペーパーレス化は何をもたらすか

オフィスステーション 給与明細」をはじめとしたクラウド管理システムを利用し、給与明細を紙からWebへと移行する企業が増えています。

給与明細はパソコン、スマートフォンなどからいつでも印刷できる状態であれば、Web上での発行(電子化)が可能です。

※所得税法では「交付を受ける従業員が承諾すれば明細の電子化は可能なものの、書面での交付請求があれば応じなければならない」と規定
※Web給与明細を導入する際は従業員への周知・承諾が必要です。

人事・労務担当者のメリット

給与明細のペーパーレス化は人事・労務担当者や従業員にそれぞれ3つのメリットをもたらします。

・コスト削減(印刷代・用紙代・郵送費、明細書の作成・配付の人件費)
・給与明細の作成・管理で発生する業務負担削減
・セキュリティ強化(紛失リスクの防止等)

紙による給与明細は人事・労務担当者の業務を逼迫し、発行に必要な備品もコストとなります。
一方で、ペーパーレス化するとクラウド上での書類管理(法定三帳簿等)や勤怠システムと連携することで、Web上での配信を可能とし、紛失による再発行業務も不要で、作成・発行にかかる業務負担(人的ミスによる修正も含む)を劇的に減らせます。

とくに従業員や支店の数が多い、さまざまな雇用形態の人材がいる、(業界・業種の特性上)入社・退職が多い企業ほど業務効率化・コスト削減において、高い効果が得られます。

また、個人情報保護の観点から手渡しによる紛失リスクや情報漏洩に対しても、アクセス認証などセキュリティ強化が実現できます。

過去の明細書もいつでも確認できるため、アフターフォローの必要もありません。

従業員のメリット

ペーパーレス化すると、スマホやパソコンからいつでも内容を確認・印刷・再発行が可能です。紙の明細書のように保管や探す手間がなくなり、紛失の心配もありません。

まとめ

労働保険料の徴収や控除額の通知が企業の義務となっているため、給与明細の発行は、事実上、企業の義務となります。

従業員数・支店数が多い、さまざまな雇用形態を採用している、(業界の特性上)人材の入れ替わりが頻繁に発生する企業にとって、給与明細の作成・発行は人事・労務担当者に大きな負担となります。

給与明細のペーパーレス化は物理的・人的コストの削減につながり、人的ミスや紛失による個人情報漏洩リスクにも万全に備えることができます。

Web給与明細は、企業、人事・労務担当者、従業員に恩恵をもたらし、普及が拡大するテレワークにも最適な業務改革となります。

執筆者情報

オフィスステーション

人事労務にまつわる年末調整・労働保険・社会保険などの手続きや管理業務をペーパーレス化。業界最低水準のコストで導入できる人事労務クラウドソフト「オフィスステーション」。対応帳票124種類以上。マイナンバー管理やe-Gov電子申請APIにも完全対応。

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2021.08.03 16:36:18