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中小企業における所得拡大促進税制の改正

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リエ「令和3年度の税制改正大綱で中小企業における所得拡大促進税制が見直されたと聞きましたが、どのような改正案となっているのでしょうか。」

黒田「わかりました。中小企業における所得拡大促進税制は、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、賃上げだけではなく、雇用の維持・増加を促す観点から、適用要件等が見直されています。現行制度の適用要件は、(1)適用年度の雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額を超えること及び(2)適用年度の継続雇用者給与等支給額が前期の継続雇用者給与等支給額の101.5%以上であることとされていますが、改正案の適用要件は、適用年度の雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額の101.5%以上であることとされます。」

リエ「以前は、雇用者給与等支給額と継続雇用者給与等支給額の範囲が異なっていたので手間がかかりましたが、改正案では、所得拡大促進税制の適用要件が雇用者給与等支給額のみとなるので、適用要件の判定は容易になりそうですね。」

黒田「そうなるかと思います。また、控除税額は、現行制度と同様に、法人税の20%相当額を限度として、雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額に15%を乗じた金額とされます。ただし、雇用調整助成金及びこれに類するものがある場合には、控除税額を算定する場合の雇用者給与等支給額から控除することとされます。」

リエ「適用要件の判定での雇用者給与等支給額からは、雇用調整助成金等を控除しなくてもよいのでしょうか。」

黒田「適用要件の判定では、雇用者給与等支給額から雇用調整助成金等を控除する必要はありません。控除税額を算定する場合の基礎となる雇用者給与等支給額については、雇用調整助成金等を控除する必要があります。」

リエ「わかりました。所得拡大促進税制には、税額控除率の上乗せ措置もあったかと思いますが、そちらはどうなっているのでしょうか。」

黒田「現行制度では控除税額について、一定の要件を満たす場合には、税額控除率が15%から25%に引き上げられます。この上乗せ控除の要件のうち、適用年度の継続雇用者給与等支給額が前期の継続雇用者給与等支給額の102.5%以上であることとの要件が、改正案では、適用年度の雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額の102.5%以上であることとされます。なお、もう1つの要件である(1)適用年度の教育訓練費が前期の教育訓練費の110%以上であること又は(2)適用年度終了の日までに経営力向上計画の認定及び経営力向上計画に記載の経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされたこと、のいずれかを満たすことについては、見直しはされていません。」

リエ「なるほど。適用要件の判定に用いる給与等の支給額は雇用者給与等支給額のみとなり、控除税額を算定する場合には、雇用者給与等支給額から雇用調整助成金等を控除しなければならない点に注意が必要ですね。」

黒田「その通りです。適用時期は、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。」

リエ「わかりました。ありがとうございます。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「令和3年度の税制改正大綱で中小企業における所得拡大促進税制が見直されたと聞きましたが、どのような改正案となっているのでしょうか。」黒田「わかりました。中小企業における所得拡大促進税制は、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、賃上げだけではなく、雇用の維持・増加を促す観点から、適用要件等が見直されています。現行制度の適用要件は、(1)適用年度の雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額を超えること及び(2)適用年度の継続雇用者給与等支給額が前期の継続雇用者給与等支給額の101.5%以上であることとされていますが、改正案の適用要件は、適用年度の雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額の101.5%以上であることとされます。」リエ「以前は、雇用者給与等支給額と継続雇用者給与等支給額の範囲が異なっていたので手間がかかりましたが、改正案では、所得拡大促進税制の適用要件が雇用者給与等支給額のみとなるので、適用要件の判定は容易になりそうですね。」黒田「そうなるかと思います。また、控除税額は、現行制度と同様に、法人税の20%相当額を限度として、雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額に15%を乗じた金額とされます。ただし、雇用調整助成金及びこれに類するものがある場合には、控除税額を算定する場合の雇用者給与等支給額から控除することとされます。」リエ「適用要件の判定での雇用者給与等支給額からは、雇用調整助成金等を控除しなくてもよいのでしょうか。」黒田「適用要件の判定では、雇用者給与等支給額から雇用調整助成金等を控除する必要はありません。控除税額を算定する場合の基礎となる雇用者給与等支給額については、雇用調整助成金等を控除する必要があります。」リエ「わかりました。所得拡大促進税制には、税額控除率の上乗せ措置もあったかと思いますが、そちらはどうなっているのでしょうか。」黒田「現行制度では控除税額について、一定の要件を満たす場合には、税額控除率が15%から25%に引き上げられます。この上乗せ控除の要件のうち、適用年度の継続雇用者給与等支給額が前期の継続雇用者給与等支給額の102.5%以上であることとの要件が、改正案では、適用年度の雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額の102.5%以上であることとされます。なお、もう1つの要件である(1)適用年度の教育訓練費が前期の教育訓練費の110%以上であること又は(2)適用年度終了の日までに経営力向上計画の認定及び経営力向上計画に記載の経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされたこと、のいずれかを満たすことについては、見直しはされていません。」リエ「なるほど。適用要件の判定に用いる給与等の支給額は雇用者給与等支給額のみとなり、控除税額を算定する場合には、雇用者給与等支給額から雇用調整助成金等を控除しなければならない点に注意が必要ですね。」黒田「その通りです。適用時期は、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。」リエ「わかりました。ありがとうございます。」
2021.02.08 16:20:21