HOME コラム一覧 時価を下回る価額での売買と贈与税との関係は?

時価を下回る価額での売買と贈与税との関係は?

税務 法務
post_visual

問1 私原告Aは、被告Bとの間の事件で和解することになりました。和解内容の一つは、私のX不動産を金○○円で被告Bに対し売買するというものです。どのくらいの金額にしたら良いのでしょうか?
答え 時価相当額を対価とするのが良いでしょう。

問2 私としては、この事件を何とか早期に解決したいのです。被告Bに対し、時価を下回る価額で売買することはダメでしょうか?
答え もしも被告Bが法人であれば、あなたAがX不動産を法人Bに対し、時価を下回る金額○○円で売買したとして、翌年の2月1日から3月15日までの期間に確定申告して納付しようとした場合(贈与税については相続税法28条、33条)、あなたが納付すべき不動産の譲渡所得税は、その現実の売買金額で計算した税額にとどまらない危険性があります。それでも良いですか?

問3 それはなぜそうなるのですか?
答え 所得税法59条1項という規定によると、居住者の有する山林又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、山林所得、譲渡所得等の計算については、その時における価額に相当する金額(これが「時価相当額」)により、これらの資産の譲渡があったものとみなすとされています。
 この資産の移転とは、同条同項1号では「贈与又は相続若しくは遺贈」です。同条同項2号では、「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」とされています。 「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」には、「売買」がそれに当たります。

問4 所得税59条1項2号「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る)」ついて説明して下さい。
答え 資産を上記の額により法人に対し譲渡した場合は時価相当額により資産の譲渡があったとみなすとされて、所得税の計算は、時価相当額の売買がされたみなされて所得税の計算がされます。

問5 「著しく低い価額の対価として政令で定める額」とはどういう金額ですか?
答え ここでいう「政令で定める額」とは、所得税法施行令69条で「資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額」とされています。個人が法人に対し、「時価の2分の1未満の金額」で資産を譲渡したときに限り、低額譲渡となり、譲渡した個人にみなし譲渡所得課税がなされ、譲渡を譲り受けた法人は譲渡価額と時価との差額について寄付を受けたことになり、法人税を課税されます。

問6 上記規定は、贈与や売買の相手方としては、法人だけでなく、個人にも適用されるのですか?
答え 個人には適用されません。所得税法59条1項の1号、2号においては、贈与や「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」については、カッコ書きの中に「法人に対するものに限る。」とありますから。

問7 要するに、私が法人に対し、「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」(以下「低額譲渡」という。)すなわち、時価相当額よりも低い金額で売買をして不動産の譲渡所得税申告をした場合、現実に受け取った低い金額でなく、時価相当額を対価として資産の譲渡、売買があったものとみなされて、譲渡所得等の金額を計算されて、譲渡所得税額を決められてしまうということですか?
答え そういうことです。あなたが現実に受け取った金額を前提に確定申告をしても税務署から否認されてしまうということです。

問8 どうして法人についてそのような規定があるのですか?
答え キャピタルゲイン(値上がり益)課税という考え方があります。時価を下回る価額での法人相手の売買は経済合理性に反するということでしょうか。

問9 私の場合は、相手の被告Bは個人ですから、全く問題はありませんでしょうか?
答え あなたの場合、和解で、不動産を被告Bに対し、売買で譲渡した場合は、必ず翌年の2月1日から3月15日までの期間に不動産の譲渡所得税の申告をして下さい。和解すれば、当然被告Bは、和解条項に基づいて、原告Aから被告Bへ所有権移転登記手続をされるでしょう。登記についての情報は、法務局から定期的に税務署に電子情報が送られると聞いています。何もしないと、やがて、あなたのもとに税務署から「お尋ねのハガキ」が送られてきます。ですから、申告・納付は欠かせません。

問10 私が被告Bに対して時価相当額を下回る金額で売買をした場合、現実の売買金額で不動産の譲渡所得税の申告をしても問題ないでしょうか?
答え 問題ありません。個人が個人に対して、資産を低額譲渡した場合、その現実の譲渡価額をもって所得計算を行って、不動産の譲渡所得税額を算定し、法人に対して資産を譲渡した場合のように、時価相当額をもって資産の譲渡があったものとみなされることはありません。
 ただ、所得税法60条で、贈与を受けたりした者や相続で資産を取得した者は贈与者や被相続人の取得価格や取得時期を引き継ぐことには気を付けて下さい。これについては、企業法務・会計研究会で発表した「相続税納付のための不動産売却、相続税申告等の税理士過誤の1事例の紹介」の中で詳しく述べたので、これを参照して下さい。このタピスランドでも別にお話しする機会がまたあるでしょう。

問11 それでは、私原告Aと被告Bとの和解では、これまでの説明以外に問題はないでしょうか?
答え いや問題はまだあります。低額譲渡と贈与税の関係では、譲り受けた被告Bについて問題が起こることがあります。相続税法7条本文という規定があります。すなわち、個人が著しく低い価額で土地建物の譲渡を受けた場合、財産の対価と時価との差額について、贈与税が課税されるということです。詳しくは別の機会に述べたいと思います。他に、連帯納付義務の問題がありますが、これも別の機会にお話しします。

執筆者情報

弁護士 永留 克記

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

関連リンク

民法(相続関係)等の改正について

コラム
/news/management/2018/img/img_kinyu_01_s.jpg
問1 私原告Aは、被告Bとの間の事件で和解することになりました。和解内容の一つは、私のX不動産を金○○円で被告Bに対し売買するというものです。どのくらいの金額にしたら良いのでしょうか?答え 時価相当額を対価とするのが良いでしょう。問2 私としては、この事件を何とか早期に解決したいのです。被告Bに対し、時価を下回る価額で売買することはダメでしょうか?答え もしも被告Bが法人であれば、あなたAがX不動産を法人Bに対し、時価を下回る金額○○円で売買したとして、翌年の2月1日から3月15日までの期間に確定申告して納付しようとした場合(贈与税については相続税法28条、33条)、あなたが納付すべき不動産の譲渡所得税は、その現実の売買金額で計算した税額にとどまらない危険性があります。それでも良いですか?問3 それはなぜそうなるのですか?答え 所得税法59条1項という規定によると、居住者の有する山林又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、山林所得、譲渡所得等の計算については、その時における価額に相当する金額(これが「時価相当額」)により、これらの資産の譲渡があったものとみなすとされています。 この資産の移転とは、同条同項1号では「贈与又は相続若しくは遺贈」です。同条同項2号では、「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」とされています。 「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」には、「売買」がそれに当たります。問4 所得税59条1項2号「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る)」ついて説明して下さい。答え 資産を上記の額により法人に対し譲渡した場合は時価相当額により資産の譲渡があったとみなすとされて、所得税の計算は、時価相当額の売買がされたみなされて所得税の計算がされます。問5 「著しく低い価額の対価として政令で定める額」とはどういう金額ですか?答え ここでいう「政令で定める額」とは、所得税法施行令69条で「資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額」とされています。個人が法人に対し、「時価の2分の1未満の金額」で資産を譲渡したときに限り、低額譲渡となり、譲渡した個人にみなし譲渡所得課税がなされ、譲渡を譲り受けた法人は譲渡価額と時価との差額について寄付を受けたことになり、法人税を課税されます。問6 上記規定は、贈与や売買の相手方としては、法人だけでなく、個人にも適用されるのですか?答え 個人には適用されません。所得税法59条1項の1号、2号においては、贈与や「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」については、カッコ書きの中に「法人に対するものに限る。」とありますから。問7 要するに、私が法人に対し、「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」(以下「低額譲渡」という。)すなわち、時価相当額よりも低い金額で売買をして不動産の譲渡所得税申告をした場合、現実に受け取った低い金額でなく、時価相当額を対価として資産の譲渡、売買があったものとみなされて、譲渡所得等の金額を計算されて、譲渡所得税額を決められてしまうということですか?答え そういうことです。あなたが現実に受け取った金額を前提に確定申告をしても税務署から否認されてしまうということです。問8 どうして法人についてそのような規定があるのですか?答え キャピタルゲイン(値上がり益)課税という考え方があります。時価を下回る価額での法人相手の売買は経済合理性に反するということでしょうか。問9 私の場合は、相手の被告Bは個人ですから、全く問題はありませんでしょうか?答え あなたの場合、和解で、不動産を被告Bに対し、売買で譲渡した場合は、必ず翌年の2月1日から3月15日までの期間に不動産の譲渡所得税の申告をして下さい。和解すれば、当然被告Bは、和解条項に基づいて、原告Aから被告Bへ所有権移転登記手続をされるでしょう。登記についての情報は、法務局から定期的に税務署に電子情報が送られると聞いています。何もしないと、やがて、あなたのもとに税務署から「お尋ねのハガキ」が送られてきます。ですから、申告・納付は欠かせません。問10 私が被告Bに対して時価相当額を下回る金額で売買をした場合、現実の売買金額で不動産の譲渡所得税の申告をしても問題ないでしょうか?答え 問題ありません。個人が個人に対して、資産を低額譲渡した場合、その現実の譲渡価額をもって所得計算を行って、不動産の譲渡所得税額を算定し、法人に対して資産を譲渡した場合のように、時価相当額をもって資産の譲渡があったものとみなされることはありません。 ただ、所得税法60条で、贈与を受けたりした者や相続で資産を取得した者は贈与者や被相続人の取得価格や取得時期を引き継ぐことには気を付けて下さい。これについては、企業法務・会計研究会で発表した「相続税納付のための不動産売却、相続税申告等の税理士過誤の1事例の紹介」の中で詳しく述べたので、これを参照して下さい。このタピスランドでも別にお話しする機会がまたあるでしょう。問11 それでは、私原告Aと被告Bとの和解では、これまでの説明以外に問題はないでしょうか?答え いや問題はまだあります。低額譲渡と贈与税の関係では、譲り受けた被告Bについて問題が起こることがあります。相続税法7条本文という規定があります。すなわち、個人が著しく低い価額で土地建物の譲渡を受けた場合、財産の対価と時価との差額について、贈与税が課税されるということです。詳しくは別の機会に述べたいと思います。他に、連帯納付義務の問題がありますが、これも別の機会にお話しします。
2018.03.13 09:45:53