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10年限定、事業承継税制の抜本拡充!(平成30年度税制改正)

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平成30年度税制改正大綱が発表

 平成29年12月14日、与党より「平成30年度税制改正大綱」が発表されました。
 また続けて、平成29年12月22日、予算案とともに閣議に報告され、「平成30年度税制改正要綱」として閣議決定されました。

 この後の一般的な流れとしては、翌年早々に法案化されて、平成30年3月末までに成立・公布され、平成30年4月1日からの施行となります。

 税制改正は、「税制が難解」「税制が国の予算と密接にからむ」という影響を受けて、他の法案と違い、かなり濃い(?)議論を積み重なることになっていて、最終的に大綱が出るまでは何が飛び出すかわからないという代物でもあります。

 今回はそれほどのびっくり箱はありませんでしたが、中小企業に影響する分野では、キーワードとしては、「事業承継」「生産性革命」「人づくり革命」となります。

 今回はその中で、事業承継についてです。

10年限定、事業承継税制の抜本拡充!

 未上場の中小企業を息子等が承継しようとすると、内部留保が手厚い会社ほど株価高騰により相続税負担増になります。

 そのため、現在でも「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」という制度がありますが、適用した場合のデメリットの大きさなどから、利用がほとんど行われていません。

 そこで、平成30年度税制改正大綱では、「今後5年以内に承継計画(仮称)を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象とし、下記のように抜本拡充される」予定です。

(現行制度)
納税猶予の対象になる株式数には2/3の上限があり、相続税の猶予割合は80%。
後継者は事業承継時に多額の贈与税・相続税を納税することがある。

(改正案)
対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。
また、納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担ゼロに。

(現行制度)
税制の対象となるのは、一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続される場合のみ。

(改正案)
親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。
中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援。

(現行制度)
後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税されるため、過大な税負担が生じうる。

(改正案)
売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免。経営環境の変化による将来の不安を軽減。

(現行制度)
税制の適用後、5年間で平均8割以上の雇用を維持できなければ猶予打切り。
人手不足の中、雇用要件は中小企業にとって大きな負担。

(改正案)
5年間で平均8割以上の雇用要件を未達成の場合でも、猶予を継続可能に(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)。


 上記以外にも、事業承継税制の適用を受ける場合に限定して、親族外にも相続時精算課税制度の適用範囲を拡大する措置が講じられる予定です。

執筆者情報

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今村仁

マネーコンシェルジュ税理士法人 代表 

会計事務所を経験後ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所を開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。相続承継M&Aセンター株式会社、代表取締役社長。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等

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2017.12.28 09:11:58