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住民税“均等割”を税引前当期純利益の次に表示する理由

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企業会計基準委員会(ASBJ)はこのほど、企業会計基準公開草案第59号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」に対するコメントを公表した。これはASBJが2016年11月9日から2017年1月10日 にかけて公表した「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」に対して寄せられたパブコメとそれに対するASBJの考え方を取りまとめたもの。

 注目したいのは、住民税(均等割)の損益計算上の取扱いだ。企業会計基準公開草案第59号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」では日本公認会計士協会の実務対応報告第12号を踏襲し、住民税(均等割)は損益計算書では他の住民税(法人税割)と同様、税引前当期純利益(又は損失)の次に、「法人税、住民税及び事業税」などその内容を示す科目をもって表示する旨規定されている。これに関して、「住民税(均等割)は、資本金等の金額及び従業員数に応じて決定されるものであり、所得等に対する税金ではない」「国際会計基準を任意適用する企業の実務の観点からも、住民税(均等割)については、事業税(付加価値割、資本割)と同様に販売費及び一般管理費として表示することも可能とするように規定頂きたい」とのコメントが寄せられていた。

 これに対して、ASBJは「住民税(均等割)についての取扱いは、実務対応報告第12号の検討時点の状況と大きく異ならないと考えられるため、本公開草案の提案を変更しないこととした」と回答している。住民税(均等割)は所得に応じた課税ではなく外形標準課税であることから、事業税(付加価値割、資本割)と同様に販売費及び一般管理費として表示するのが整合的と言える。それでもなお、住民税(均等割)を税引前当期純利益の次に表示するのはASBJが指摘・回答しているように「重要性に乏しい」「実務上定着している」といった理由しかない。3月16日に企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」が施行された以上、これが改正されることは当面の間は考えにくく、実務上、事業税(付加価値割、資本割)との不整合は甘受さざるを得ないと言えよう。

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日本IPO実務検定協会
財務報告実務検定事務局

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企業会計基準委員会(ASBJ)はこのほど、企業会計基準公開草案第59号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」に対するコメントを公表した。これはASBJが2016年11月9日から2017年1月10日 にかけて公表した「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」に対して寄せられたパブコメとそれに対するASBJの考え方を取りまとめたもの。  注目したいのは、住民税(均等割)の損益計算上の取扱いだ。企業会計基準公開草案第59号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」では日本公認会計士協会の実務対応報告第12号を踏襲し、住民税(均等割)は損益計算書では他の住民税(法人税割)と同様、税引前当期純利益(又は損失)の次に、「法人税、住民税及び事業税」などその内容を示す科目をもって表示する旨規定されている。これに関して、「住民税(均等割)は、資本金等の金額及び従業員数に応じて決定されるものであり、所得等に対する税金ではない」「国際会計基準を任意適用する企業の実務の観点からも、住民税(均等割)については、事業税(付加価値割、資本割)と同様に販売費及び一般管理費として表示することも可能とするように規定頂きたい」とのコメントが寄せられていた。  これに対して、ASBJは「住民税(均等割)についての取扱いは、実務対応報告第12号の検討時点の状況と大きく異ならないと考えられるため、本公開草案の提案を変更しないこととした」と回答している。住民税(均等割)は所得に応じた課税ではなく外形標準課税であることから、事業税(付加価値割、資本割)と同様に販売費及び一般管理費として表示するのが整合的と言える。それでもなお、住民税(均等割)を税引前当期純利益の次に表示するのはASBJが指摘・回答しているように「重要性に乏しい」「実務上定着している」といった理由しかない。3月16日に企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」が施行された以上、これが改正されることは当面の間は考えにくく、実務上、事業税(付加価値割、資本割)との不整合は甘受さざるを得ないと言えよう。
2017.04.24 15:00:26