1.法人税法上の役員
 第5回 1−5 使用人兼務役員
掲載日:08/03/18

 会社法では、監査役の使用人兼務禁止の規定(会社法335条2項)がありますが、取締役にはこのような兼務禁止の規定がなく、使用人を兼ねることができます(ただし委員会設置会社の取締役を除く)。
 このように使用人としての職務を有する役員を使用人兼務役員といい、その使用人としての職務に対する給与については、適正額である限り、使用人給与と同じ取り扱いをし、役員給与等の損金不算入の規定の範囲から除外しています。
 以上のことから、税務上、使用人兼務役員の範囲を明らかにする必要があり、以下のとおり、それを明確に定義しています。


1)使用人兼務役員の範囲

 使用人兼務役員とは、役員(社長、理事長その他特定の役員を除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいいます(法人税法34条5項)。

 なお、上記のカッコ書きの「社長、理事長その他特定の役員」は、使用人兼務役員とはならず、具体的には、以下の役員がこれに該当します(法人税法施行令71条)。

(1) 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
(2) 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
(3) 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
(4) 取締役(委員会設置会社の取締役に限る)、会計参与及び監査役並びに監事
(5) 同族会社の「みなし役員」の規定による、所有割合による判定要件を満たしているもの

 ※ 民法34条(公益法人の設立)の規定により設立された社団法人または財団法人の場合、原則として、理事はすべて代表権を有することとされていますが(民法53条)、その理事が定款もしくは寄付行為の規定または総会の決議により代表権を有しないこととされている場合には、上記(1)に掲げる者には該当しません(法人税法基本通達9−2−3)。

 上記(1)〜(3)の者は、代表権を有する者あるいは会社を代表する権限を持ち私法上の責任を有する者であり、(4)は、会社法等において、そもそも使用人を兼ねることを禁止されている者です。
 ちなみに(2)の「副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員」とは、定款等の規定または総会もしくは取締役会の決議等により、会社の内部組織上において明確にその地位が付与された役員をいい(法人税法基本通達9−2−4)、単なる通称または自称専務等のように、実態は単なる平取締役であるような者は該当しません。

 また、零細企業等においては、実際には使用人としての業務しか行っていない者を名前だけの監査役に置くケースもありますが、前述のとおり、監査役はその地位の独立性確保の必要性から、法的に使用人を兼務することを禁止されておりますので、たとえ実態が使用人であるとしても、使用人兼務役員にはなりません。

 なお(5)の「所有割合」については、同族会社の判定方法と同じく、株式等の持株割合のみでなく、議決権割合及び社員数割合による判定も行う必要があります。具体的には、次の3つの割合のいずれかに該当するかどうかを判定する必要があります。

 [1] その会社が、株式数または出資数または出資金額(以下「株式数等」)の判定により同族会社に該当する場合には、その株式数等の割合
 [2] その会社が、議決権による判定により同族会社に該当する場合には、その議決権数による割合
 [3] その会社が社員または業務を執行する社員の数による判定により同族会社とな る場合には、その社員または業務を執行する社員数の割合


2)職制上の地位

 部長、課長のほか、法人の使用人としての職制上の地位とは、支店長、工場長、営業所長、主任等の法人の機構上定められている使用人たる地位をいい、取締役等で、総務担当、経理担当といった使用人としての職制上の地位ではなく特定部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しないことになります(法人税法基本通達9−2−2)。
 また、事業内容が単純で使用人が少数である等の事情により、法人がその使用人について特に機構としてその職務上の地位を定めていない場合には、当該法人の役員で、常時従事している職務が他の使用人の職務の内容と同質であると認められるものについては、使用人兼務役員として取り扱うことができるものとされます(法人税法基本通達9−2−3)。

 なお、「常時使用人としての職務に従事するもの」という要件があるため、非常勤役員は使用人兼務役員となることはできません。


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