2.役員報酬
 第6回 2−1 役員報酬の性格
掲載日:08/03/25

 株式会社と取締役との関係は、民法における委任に関する規定に従うこととされ(会社法330条)、受任者たる取締役は、特約がなければ株式会社に対して報酬を請求することができないのが原則です(民法648条1項)。しかし、実際には、役員の職務には有償性があり、取締役が報酬を受けることは実務上原則化しています。
 ただし、取締役の報酬を取締役自らが決定できるとなれば、株主の利益を犠牲にして、取締役の利益を優先した過剰な報酬を支給する結果となる恐れがあります。このような、いわゆるお手盛り防止のためにも、会社法は、以下のとおり、その決定について株主総会の決議を要することとしているわけです(会社法361条)。

第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下「報酬等」という)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
  1 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
  2 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
  3 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
(2)  前項第2号又は第3号に掲げる事項を定め、又はこれを改訂する議案を株主 総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由 を説明しなければならない。

 職務執行の対価とは、職務執行期間と経済的利益との関係が明確なものに限らず、インセンティブや福利厚生目的で付与される利益等、およそ取締役としての地位に着目して付与される利益を含むものであり、その対価は金銭に限らず、社債や新株予約権など、会社に対する債権も含まれ、現実の経済的利益の獲得が将来的なものであったり、取締役の行為を必要とするものであったとしても該当することになります。
 なお、それまで利益処分案に係る承認決議による支給が主流だった役員賞与についても、職務執行の対価である旨が明確化され、この361条を根拠にして支給されることになっています。

 また、新株予約権という財産上の価値を有するものを交付するストック・オプションも、会社法上では「報酬等」に該当し、報酬等を大きく分類すれば、(1)役員報酬、(2)役員賞与、(3)役員退職慰労金、(4)ストック・オプションとなります。

 なお、「報酬等のうち額が確定していないもの」とは、業績連動型報酬等をいい、「金銭でないもの」とは、例えば、ストック・オプションがこれに該当します。


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